新選組色恋録
□陽月の焔・弐(沖田side)
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―何で?どうして?一くんと千鶴ちゃんが?―
僕の頭の中はもう真っ白だった。
無意味に震え出す体と、体の奥から込み上げる激しい嘔吐感に襲われた。
一くんと千鶴ちゃんが抱き合いながら何かを話している様にも見えたが、頭が朦朧として声すら聞こえない。
目も逸らせぬ僕は口許を力なく押さえたが、その刹那、胸を貫く痛みが走った。
恐らく、槍の名手の左之さんでもここまで鋭く、僕の体を貫くなんて事出来ないくらいに…。
「…何なんだよ…それ…。」
辛うじて口をついて出た言葉は既に生気を欠いていた。
一くんの唇が千鶴ちゃんの唇を力強く覆った。
今までに見たことがない程、雄々しく力強い一くんの表情。
彼女の全てを奪い尽くす様に、一くんは夢中で彼女を貪っていた。
カクン…と己の体の力が抜け、床に身を崩すと同時に何かの箍が外れた気がした。
―…渡さない…―
―渡さない!!―
僕は腰に下げた刀を鞘ごと自分の腰から引き抜くと、それを支えにその場から立ち上がった。