新選組色恋録
□陽月の焔・弐(斎藤side)
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「俺は間違っているのだろうか…。」
俺は注がれた酒もそのままに、ゆっくりと自分の想いを語り始めた。
「千鶴を見るだけで心が冷静ではいられなくなる…。酷く掻き乱されて、自分でも思いもしない行動をしてしまうのだ。」
左之は決して上手とは言えないそんな俺の一言一言を黙って聞いてくれている。
「いけないと思うことも…千鶴の前では止められぬ。」
すると左之は言った。
「お前と総司は似た者同士なんじゃねぇか?」
これには意表をつかれた。
まさかこの俺と総司が似た者同士だとは、到底思えまい。
俺の表情を見取ってか、左之は口角を上げた。
「今お前、まさかと思っただろ?お前がまさかと思ってんのは表面的な問題で、俺が言ってんのは中身の問題なんだよ。」
「中身…。」
「そうだなぁ…表面だけで言えばお前らは静と動。例えて言うならお前が夜の月なら、総司は昼の太陽だ。全く正反対で、対になるもの、交わる事のないものなんだ。」
「…。」
「右差しのお前の横に総司がいて、左差しの総司の横にお前がいる。お互い足りない物を埋めあう関係。それがお前ら二人なんだと思う。」
でもと、左之は一口酒を煽って続ける。
「その利害関係が崩れたらどうなる?対を為してるから、今まで欲しいと思うものもたまたま違ったんだ。」
その一言に俺はハッとした。
「…求めるものが同じだから…それ故火花が散るというのか?」