白と椿
□真っ白な世界
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二匹目、たい焼きのあんこに魅了されてる頃
「ところでさ」
「むぐ?」
「名前は?」
「…なまえ…?」
「あるだろ、言いたく無いか?」
視線を下に落として、沈黙の中、あんこのざらつきをつばと一緒に飲んだ。
黙っていると「そうだな」と男が大きく一息ついて
「まずは俺からだよな、俺は不知火ゲンマ。少なくとも1年2年は一緒に居るから、仲良くしようや」と手を出した
そのままにしておくわけにもいかず、恐る恐る手を出すと大きな手がぎゅっと、彼女の手を包んだ
「…雪菜」
「雪菜?」
「うん」
「・・・よろしくな、雪菜」
そういうとくしゃくしゃ頭をなでた
こそばゆいと、雪菜は目を細めて「よろしく、ゲンマさん」と呟いた
「ゲンマでいいよ」
「ゲンマ」
「よしよし」
甘い香りの中で、人の手の温もりが心地よくてこそばゆい
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