白と椿
□私と私
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あの日
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まだ春が訪れたばかり、冷たい風が吹いて、遠くに雨雲が見える
崖の下には花が一面に咲き乱れていて、椿は、崖の先に座るとボーっと景色を眺めた
「一人で何してるんだい?『椿』(つばき)」
「霞(かすみ)…」
霞と呼ばれる優男は、椿の背中一点を見つめた、心臓の後ろを
「椿、君は4代目になるの?」
椿はそれを見上げると冷たく
「私に、皆をまとめる人徳があるとは思えないけれど」 と、言い放つ
「人徳?何いってる、力こそ全て、どれだけ人を殺せるか、それこそが、音の里を治めるに相応しい」
「じじさまと同じね、パパは皆を守って幸せに暮らせって言ってるけど?」
視線を花畑へと戻すと「私は、マスコットでいいよ」と笑った
「君とボクの力こそ、この世界を支配するのにふさわしいのに」
力こそ、全て
人の命を奪う力こそ、忍の世を統べるべきなのだ
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