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□幸せになって下さい(私のように)
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・多分高1ぐらいです
・ゴッドエデンってなに?
 ぐらいに現代パロディです
・カレカノです
・シュウちゃんの設定捏造しまくりです笑



「いでっ」

ベッドから落ちて頭をぶつけて目が覚めた。
なんて悪い目の覚め方なんだろう……。
時計を見ると6時32分。
まだ起きるには早い時間だった。
しかし先ほどぶつけた頭がじんじんと痛み
二度寝するのも面倒だったため、
僕は起き上がり顔を洗いに洗面所へと向かった。

ぱちゃぱちゃと水を跳ねさせながら顔を洗う。
頭の痛みもおさまり、
僕は朝御飯でも作ってみようかと洗面所を出た。

今日は日曜日だ。
いつもなら10時近くまで寝ているが
まぁたまには早く起きるのも悪くないな、と思う。
白いエプロンを着ける。
このエプロンは母から貰ったもので
中学生の頃から使っていたからか、
たくさん染みがついていた。

食パンをトースターに入れて焼いている間に、
卵焼きを作ろうと考えた。
三つ卵を割ってボウルに落とし、さえ箸でかき混ぜる。
カッカッカッカッという音と共に白身と黄身が混り合う。
ボウルの中に大さじ三杯砂糖を入れ、
みりんとお酒を少し入れる。
白竜には甘くし過ぎだ、と怒られたが
あいにく体重や糖尿病に悩んだことはないので、
なにも変わってはいない。
卵焼きを作る為なのか四角いフライパンに
ボウルの中の溶き卵の二分の一ぐらいを垂らす。
ジューッと焼けていく音がした。
焼けて少し固くなった卵を
フライパンの端から端へと丸めていく。
端に追いやられた卵を浮かせながら、
残りの卵をフライパンへと垂らした。



「出来たぁ……」

今までで一番良い出来だと思われる卵焼きが完成した。

「あらシュウ。起きていたの?」

「あ、お母さん。ちょっと早く目が覚めちゃったから」

母が母の寝室から出てくる。
我が家は母子家庭だ。
物心ついたときから父親はいなく、
母は再婚もしていない。
母から父親の話を聞いたことはなく、
聞こうとしても悲しそうな顔をするだけだった。


「卵焼き?シュウ、料理上手くなったわねぇ」

「えへへ、まぁね」

母が皿の上に並べられた卵焼きを一つつまみ食いするが、
いつものことなので咎めたりはしない。
母は甘いわねぇと呟いて洗面所に行った。


「ウ゛ーッウ゛ーッ」
昨日の夜から充電しっ放しだった
携帯電話のバイブレータが鳴る。
僕は布巾で手を拭いてから
携帯電話を手に取って開き、耳に当てた。

「もしもし?」

『朝早くにすまない。俺だ』

携帯電話から自分の彼氏である白竜の声が聞こえ、
胸が高鳴る自分は乙女だなぁなんて
考えながらソファーに座った。

「大丈夫だよ。どうかしたの?僕の声聞きたくなった?」

白竜はそれもあるな、と笑う。

『お袋さんの調子、どうだ?』

「特に問題ないよ。っていうか僕よりお母さんの心配?」

僕の母親はいわゆる鬱病で僕が小学生の時は
食事も作らず、話し掛けても応答はないことが多かった。
小学生の頃から仲が良かった白竜は
そんな我が家の心配を昔からしていて、
白竜の家に一時期引き取って貰ったこともあった。
僕が中学に入った頃から段々と母の鬱病は治り、
今では病院通いもなくなった。
そんな今でも白竜は僕や僕の母の心配をしてくれているのだ。

『お前も無理はするな。俺も出来る限り力になるから』

「白竜は心配し過ぎだよー。
 僕たちは大丈夫だから。
 ま、本当にピンチになったら助けてもらうかもだけど」

『あぁ、じゃあそろそろ』

「速っ!彼女との電話切り上げるの速すぎるでしょ!」

『……別に話すこともないじゃないか』

「そーゆー問題!?白竜は女心が解ってないなぁ……
 っていうか恋人としてどうなのさそれ」

僕たちが付き合い始めたのはごく最近のことだ。
白竜を異性として好きだと感じ始めたのは
多分中二ぐらいだったと思う。
クラスメイトに「シュウと白竜って仲良いよね」
と言われ、急に意識し始めてしまった。
それからなんだか恥ずかしくて、
白竜を突き放した時期もあった。
今思えば良い思い出だ。


『もっと話したいなら会って話せば良いだろう』

「じゃあ今すぐに会いに来てくれる?」

『シュウが会いたいなら』


こんな甘々な台詞を笑えるようになったのも最近。
昔の僕と白竜じゃ考えられない事だと思う。
僕は今はパジャマだから良いよ、
と言って軽い挨拶をし電話を切った。


「誰ぇ?白竜くん?」

「……良いじゃん誰でも……」

「なによー今更恥ずかしがることないじゃない」

母がニヤニヤしながらこっちを見ている。
年頃の娘に彼氏のことを聞こうとするなんて
デリカシーのないやつめ!
……いや、普通か。

「別に恥ずかしがってなんかないもん」

「もー可愛いなー」

母が僕に近付き僕の頭をワシワシと撫でる。
僕はやめてよ、と母の手を引き剥がし立ち上がった。
するとキッチンの方からなにやら焦げ臭い臭いがした。


「あぁー!完全に忘れてたー!」

キッチンへ急ぐと先程トースターで焼いたパンが、
火が強すぎたのか黒こげになっていた。
僕はうわぁ……と言いながら黒こげになったパンを
取りだして皿の上に置き、ジーッと眺めた。

「こりゃあシュウの肌より黒いわねぇ……」

横から母がヒョイと顔を出す。

「やっちゃった……」

「彼氏と電話なんかしてるからよー」

「うっ……」

僕は隣でニヤついている母になにも言い返せなかった。
母はてきぱきと黒こげになったパンを捨て、
新しい食パンをトーストターに入れる。

「白竜くんには色々お世話になったし、
 シュウをお嫁に行かせられるのは
 白竜くんぐらいよ」

「な、な、な、」

なんでいきなりそんなことを言ってくるのか解らず
おどおどしていると、母に顔真っ赤よ
と言われ必死に顔を隠した。

「シュウももう高校生なんだから将来のことも考えとかないと」

「ででででもけこけこ結婚なんて……!」

「私もいつ死ぬか解らないし、孫の顔も見ておきたいわー」

「まっ孫って!」

顔から火が出そう、いや、もうすでに顔から火が出ている。
母は笑いながらさっきとは違う手つきで僕を撫でた。

「私があなたのお父さんに会ったのは丁度今のあなたぐらいだったかしらね……」

僕は驚いた。
父親の話を自分からすることなんて一度もなかった母が、
懐かしそうに父親のことを話し始めたからだ。

「あの人『18になったら絶対に結婚する!』って聞かなくって……。
 あの人の18歳の誕生日に入籍したのよ」

母は僕に微笑んむ。
僕はただただ驚いていた。
僕とそう変わらない時に結婚していただなんて、
全く知らなかった。

「22の時にシュウがお腹に出来て、23の時にシュウを産んだ。
 あの人『俺の子だ俺の子だ』って騒いで騒いで……。
 病院の人にも怒られてたわー」

ふふふ、と母はなにかを思い出して笑う。
僕はこんな風に笑っている母を見たのは、
初めてなんじゃないかと思った。

「でもシュウの一歳の誕生日に『急いで仕事から帰る!』なんて言って、職場からの帰り道で交通事故だなんて……。
 最初は耳を疑ったわよ本当に」

「お父さん、僕の一歳の誕生日に……」

「今ではとても後悔しているけれど、当時はまだ幼かったあなたを恨んだ。
 シュウがいなければあの人は生きていたかもしれない、って。
 こんな話、するもんじゃないわよね……」

僕は構わないよ、と言って母の言葉に耳を傾けた。

「あなたの世話もしなくなって、精神状態もおかしくなって。
 あの時から神田川さんの家には本当にお世話になったわ。
 だんだんあなたにも心を開けるようになって、今では普通に会話も出来る。
 私は嬉しかったわ。
 こんな私でも『お母さん』って呼んでもらえるんだ、って……」

母の目には涙が浮かんでいた。

「私には空白の時間があった。
 あなたと一番触れ合わなきゃいけないときに、あなたと触れ合っていなかった。
 それでも私は幸せだったわ。
 あの人と一緒に過ごした時間、あの人が遺してくれた子どもっ一緒に過ごす時間。
 全てが私の宝物よ」

母は泣いていた。
目尻から静かに音もたてずに頬を伝い、顎から落ちていく。
僕はそんな母を見つめることしか出来なかった。
でも、僕の頭は不思議とすっきりしていた。
今まで知ることができなかった父の存在を、
知ることができたからだろうか。
母がどうして鬱病になってしまったのか、
わかったからだろうか。
それとも、母が今幸せであるということが
わかったからだろうか。

「あの人は私を幸せにしてくれた。
 シュウにもシュウを幸せにしてくれる人がいるでしょ?
 あなたは幸せにならなければいけないの。
 私と同じように、シュウを幸せにしてくれる人に出会って、幸せにしてもらわなきゃいけないの」

母は普通よりはかなり細い腕で、僕を抱き締めた。

「その、あなたを幸せにしてくれる人が私は白竜くんだって信じてるの。
 私が鬱病から立ち直ることができたのも、白竜くんのお陰かもしれない。
 あなたたちが中学二年の時だったかしら、白竜くんが私に『何があってもシュウは俺が守ります』なんて言っててね。
 その後顔真っ赤にして謝られたんだけど、結婚の挨拶みたいで良かったわ〜」

母は僕を優しく撫でた。
僕は僕自身はなにもしていないのに妙に恥ずかしくて、
顔が熱くなった。

「僕も、『幸せ』になれるかなぁ……?」

「なれるわよ。絶対に」

自信満々に母は言ったが、
どこからその自信が溢れているのかは解らなかった。
でも、なんだか母が言うことは本当のことになりそうで、
心が暖かくなった。

「……やっぱり白竜くんが良いお婿さんになってくれると、思うんだけどなぁ〜」

「もうやめてよお母さん!」



その後もそんなやり取りが続いたが、
僕は何故かとても白竜に会ってなにかを伝えたいと思った。



__________
白竜くんの出番が少ないのは
 気にしないで下さい!笑


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