タイトル名入力

□3
1ページ/1ページ



・白竜の記憶が若干なくなっている
 感じです!


ゴッドエデンを出てから十日目の朝。
俺は不思議な夢を見た。

黒髪の少女が目の前にいて、黒い涙を流していた。
俺が近付こうとするとそれを拒むように後退りするのだ。
俺はその少女が誰なのか、はっきりとはわからなかったが、記憶の隅にその少女がいる気がしてならなかった。

少女は微笑みながら泣いていた。
そしてただただ、
「消えたくない」
「ごめんね」
などマイナスな言葉を小さい口で唱えるのだ。

抱き締めてやりたかった。
誰だか解らなくても、その小さい体を抱き締めてやりたかった。
なのに、どうしても近付くことができない。
どうしようもない切なさが、自分の心の中に込み上げた。


目が覚めても、ずっとあの少女のことを考えていた。
肩まであるか無いかぐらいの黒髪に、眉の上あたりの前髪を黄緑色の綺麗な球でくくっていた。
夢の中のことを全て絵に描くことができるのではないか、と思うくらい俺の記憶はクリアだった。


俺は学校に行く準備をした。
あまり学校と言うのは好きではない。
ずっと過酷な訓練を続けていた俺にとって、学校はただ教師は給料を貰うために生徒に勉強をさせて、生徒はろくに勉強もせずに教師に逆らっているような甘々な場所でしかなかった。



学校でのことは何も覚えていない。
授業もボーッと聞いて、昼休みもただひたすらに少女のことを考えた。
まるで夢の中の少女に恋をしているかの様に。

帰り道にあった自動販売機で炭酸の入った缶ジュースを買い蓋を開けた。
プシュッという音と共に、小さな小さな水滴が蓋の上を舞い、空気に溶けて行った。

なにかに似ている。

俺はそう思った。
空に溶けて行くような感じが、なにかに似ていた。
そしてまた、夢の中の少女の笑顔が頭をよぎった。


「あの、そこ退いてもらえるかな?」

後ろから声が聞こえた。
俺は振り返り謝罪の言葉を口にしようとした。

が、出来なかった。

俺は呆然とした。
あの夢の中の少女があの笑顔で俺の前に立っていた。
少し黒い肌、綺麗な黒髪、俺より小柄で華奢な体。
全てが、あの少女と一致していた。

口も付けていない缶ジュースが俺の手から滑り落ち、ガンッと道路のコンクリートに当たった。

そして、俺は全てを思い出した。
ゴッドエデンで一緒にサッカーをした少女。
雷門中学を倒すために一緒に戦った少女。
あの笑顔、涙。



「シュウ……」

俺が色々な思考を巡らせていた間も、ずっと黙って笑顔でいた少女の名をやっと口にすることができた。

「もー、驚き過ぎー」

シュウはそう言って、より朗らかな笑顔になった。

「炭酸もったいなーい。
 僕、弁償しな……」

いよ、とシュウが喋り終わる前に、俺は夢の中で抱き締めることの出来なかった少女を抱き締めた。
体が勝手に動いていたのだ。
シュウはゆっくりと俺の背中に手を回した。

「……成仏したんじゃなかったのか……?」

「白竜に会いたくて、生まれ変わっちゃった」

えへへ、とシュウは笑った。
そんなことがあるのか、という疑問より俺はシュウにまた会えた嬉しさの方が大きかった。

「愛の力は無限大なんだよ。
 知ってた?」

「……知らなかった」

「でしょー」

シュウは俺から離れて、俺を真っ直ぐ見た。
俺もシュウと視線を合わせ、シュウを真っ直ぐ見た。

「白竜、大好き。
 会いたかった」

シュウは夢の中とは違う、綺麗な水色の涙を流した。
俺は俺より少し背の低いシュウに合わせて背中を丸め、触れるだけの口付けをした。




小説を読んでないのでよく解りませんが……。
きっとこんな感じですよね!!笑



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ