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□学パロっぽいの
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「これ、神田川君に渡しといてくれる?」

華奢な体つきで色白なぱっちり二重の美少女に手紙を渡される。シュウはなんで僕に渡すんだろう、と考えながら笑顔で手紙を受け取った。
シュウと白竜は恋人同士であるが、クラスメイト、チームメイトたちにはそれを公開していない。だから白竜とシュウは仲の良い友達という認識を持った女子が、度々こうやってシュウにラブレターを預けるのである。
今日は日直だからまた明日、と白竜に言った直後にこれを預かったため、シュウは渡すことが出来なかった。

「まぁ渡す気なんてさらさらないけど」

シュウはそう呟いて、担任から頼まれていたプリントをホッチキスで留めていく作業を始めた。
白竜は人気者だった。究極が口癖という変な一面もあるが、白竜は成績優秀で顔も悪くない。おまけにスポーツも出来る。女子にモテる要素はいくらでもあった。だからシュウは不安だった。もしも白竜が可愛い子に告白されたら、白竜は自分と別れてしまうんじゃないか。シュウはそれが恐くて恐くて、白竜が告白されないようにするしかないと考えていた。白竜に直接手紙を渡したり口頭で呼び出したりする場合は阻止の仕様がないが、自分にラブレターを預けられたときは少しでも白竜に告白する人を減らすために、白竜には渡さないでおく。シュウにはそれしか出来なかった。



担任から頼まれていた作業も終わり家に帰ろうと椅子から立ち上がると、さっきの美少女から預かったラブレターが目に入った。シュウはそれを手に取り、ゴミ箱へと向かう。そしてゴミ箱の上でゆっくりとラブレターを真っ二つに破こうとした。が、突然腕を掴まれた。

「なにをしているんだ、シュウ」
「は、白竜……!」

白竜だ。今シュウが一番会いたくない人ランキング一位の白竜だった。白竜はシュウが手にしているものを見ると眉間に皺を寄せて、シュウの手から奪い取った。

「……どうして捨てようとしてたんだ。これをお前に渡した男子の気持ちも考えてみろ。まだ未開封だろう」
「……それ、僕宛じゃないし」
「じゃあ誰宛なんだ」
「君だよ」

シュウは白竜から手紙を奪い返し、ハートのシールで封をされている面とは反対側の面を白竜に見せた。そこには可愛らしい字で『神田川君へ』と書かれている。白竜は目をパチパチさせていた。

「超可愛い女の子から預かったの。君に渡してほしいって」
「何故、俺に渡さないで捨てようとしているんだ。おかしいだろう」
「そしたら白竜は……!」

シュウは白竜は……ともう一度彼の名前を言ってからうつ向き、手紙を持つ手に力を込めた。白竜はシュウと目線を合わせるようにして少し屈み、俺がなんなんだ、とシュウに問う。シュウはうつ向いたまま口を開いた。

「もしも白竜がその子がスッゴい好みで付き合いたいと思っちゃったら、僕は捨てられちゃうでしょ?白竜は格好良いからいっぱい告白されて、この学校にだって僕より可愛い子なんていくらでもいるんだから、僕は君に捨てられちゃう気がして、恐くて、凄く恐くて、こうやって逃げ道作るしかなかったの!」

ぐすっぐすっと半ベソをかきながらシュウは答える。白竜はシュウを抱き締めた。

「シュウお前可愛過ぎる……」
「な、なに」
「そんなに俺のこと想ってくれてるとは思わなかった。ありがとう」

白竜はシュウを抱き締めている腕に力を加える。シュウは照れながらやめてよ、と白竜を引き剥がそうとした。

「でもなシュウ。俺はちゃんと俺の口で俺なりの答えを伝えたいんだ」

白竜は子どもをなだめるようにシュウの頭を撫でながら言った。

「『俺には好きな人がいるから』って、きちんと伝えたい」
「……うん、ごめんなさい」
「だからお前もこれからは俺に全部伝える。良いな?」

シュウは小さく頷いた。




破レター。

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