書物

□夜明け
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SR郭嘉 ver,

朝の訪れを告げる鳥の声に、気だるい身を起こす。
傍らに眠る相手を起こさぬよう、そっと床に足を落とした。

衣服を羽織り、外へ出る。
朝方の澄んだ空気を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。
少し肌寒い位の気温は、昨夜の余韻を残し熱を孕んだ体をほど良く冷ましてくれる。


しばらくそうして佇んでいると、後ろに気配を感じ、振り返った。
不機嫌を露にしてこちらを睨む姿が目に入る。

「郭嘉…」
「奉孝だ」
何度繰り返したか分からない会話に、互いに苦笑する。

「そう呼ぶと約束したろう、文遠?」
言われてみれば、確かにそんな言葉を交わした気がする。
その時を思い返せば、当然昨夜の情事を鮮明に思い出す結果となり、思わず視線をそらした。


「忘れた、とは言わせないぞ」
責めるような口ぶりなのに、顔は笑っている。

「それとも、思い出させてほしいのか?」
郭嘉は挑戦的な目で張遼を見上げ、ニヤリと口元を歪ませた。

不穏な空気を感じ一歩後ろに退くと、郭嘉も追いかけるように大きく前へ出る。
じわりじわりと近づく距離。

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