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□視線の先は、
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「謙也さん。

 



 なんで言わんのですか。

 



 部長に告白して、

 



 そんで早く振られてきたらええんです。

 



 そうすれば、楽になります」














































嘘。































そんなの嘘。





謙也さんが楽になるためじゃない。








俺が早く楽になりたいから。








少しでも早く。









傷付いた謙也さんを慰めて








少しでも自分を見て欲しいから。
















































「・・・・・ホンマにそれで楽になるんかな。

 














































 俺はな、財前。

 



 白石に告白してこっぴどく振られても、

 






 俺はきっと、

 






 白石を好きなこの気持ちを捨てることはできひん。

 








 どんなに罵られても、軽蔑されても、

 








 それは当然の報いなんや。

 









 親友だと信じてくれていた白石を俺は裏切ってたんやから。

 














 



































 どんなに白石に酷いことされても、

 





 俺は白石を嫌いにはなれない。

 












































 せやから――――」



































































違う。

































こんな顔をさせたかった訳じゃない。











































大好きな謙也さんの笑顔をこんなに歪ませたかった訳じゃない。




































































「ごめんな、光・・・・」



































































この人に謝って欲しかった訳じゃない。

























































ただ、笑っていて欲しかっただけなのに。


















どうして、うまく行かないんだろう。



























どうして、謙也さんは部長を好きになってしまったんだろう。

































どうして、部長は謙也さんの気持ちに気付かないんだろう。

































俺なら、あんな表情はさせたりしないのに。














































俺は今日も祈る。





















謙也さんの背中に向かって。






























































『立ち止まって』




























































『振り向いて』




















































そして



















































『俺を好きになって―――』













2012/02/19(日)
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