Novel

□降参です。
1ページ/2ページ






四天宝寺中テニス部三年の

忍足謙也は悩んでいた。




その悩みの種は、

学年が一つ下である後輩、

財前光だった。






















































「好きですわ」
























































それまでは、

先輩である己に対して、

小馬鹿にするような態度をとっていた財前が、

ある日突然、



愛の告白をしてきたのだ。






散々小馬鹿にしていた自分に


――いや、それよりもまず男である自分に、だ。
















始めは、

財前の珍しい冗談か

新しい己の弄り方なのかと思った謙也だったが、

その日を境に財前が毎日のように







「謙也さん、好きですわ」








と真顔で言ってくるものだから、

堪ったもんじゃない。






しかも、

先輩に対して生意気な口を聞いていた財前が

謙也にだけは優しい態度を取り始めたのだ。
















謙也が重い荷物を運んでいれば、



「持ったりますわ」



と、謙也の返答なしに代わりに運んであげたり…。












部活中、謙也が練習を終えると



「お疲れさまっすわ」



と、謙也にタオルとドリンクを渡してあげたり…。















最近では、

それがラブルスペアと同じくらい、

四天宝寺中テニス部の当たり前の光景となってしまったのだが、

財前の態度の変わりようについて行けない謙也にとっては、

一種の恐怖体験であった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ