Novel

□雨
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ザーッザーッザーッ


ザーッザーッザーッ







「・・・ヒッ・・・ク・・ウ・・・ヒッ・・ウゥ・・・」







ザーッザーッザーッ


ザーッザーッザーッ








































それは偶然だった。





雨が降りしきる中、傘を差して俺は家に帰ろうといつもの道を歩いていた。

そんな時、ふと通りかかった小さな公園に人影があるのを見つけ、立ち止まった。

雨ではっきりとは確認できないものの、

その人影には見覚えがあったからだ。








気付けば、俺はその公園に足を踏み入れていた。










































「―――謙也?」














俺が名前を呼べば、その人影はビクリと体を揺らして、ゆっくりと俺の方を振り返った。






「・・・し・・ら・ぃ・・し?」





声は雨の音によって遮られたが、謙也の口は確かに俺の名前を紡いでいた。




「謙也。

  お前、何してるんや。

  傘も差さずにこんなとこで・・・」





謙也が差していたであろう傘は開いたままの状態で、地面に落ちていた。


すぐに、俺は自分の傘を謙也の頭上に傾けながら、


鞄からタオルを取り出し、謙也の髪や肩を拭いてやった。







「全身びしょびしょやないか。 風邪ひいたらどないすんねん」






「し・・らいし」






「なん・・・・」







名を呼ばれ、謙也に視線を移した。


















































謙也は泣いていた。

















雨に濡れていて一見よく分からないが、



謙也の両の瞳からは雨粒とは違う雫が流れていた。





「謙也、何かあったんか?」




「・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・いつまでもこんなとこ居るわけにもいかんし、帰ろか謙也」



俺の問いに唇を噛み締めるだけの謙也の様子を見て、

言いたくないのだろうと思った俺は謙也の腕を引っ張って、踵を返した。







否、







返そうとしたところで、



謙也を掴んでいた腕を謙也が掴み返し、俺は動きを止めた。






「け、」





「しらぃし・・・俺な、俺・・・・」
































ザーッザーッザーッ


ザーッザーッザーッ






































 













    『財前に振られた』






























ザーッザーッザーッ


ザーッザーッザーッ


          
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