Novel

□愛
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「謙也〜」




土曜日の昼下がり。

謙也は恋人である白石の家に遊びに来ていた。

ちょうど、白石の家族はそれぞれの私用でおらず、

二人は白石の部屋でお菓子を食べながら、時を過ごしていた。



「謙也〜」


「なん?」


「謙也〜」


「なん?」


後ろから謙也の身体を抱きしめ、謙也の名前を連呼する白石。





「謙也〜」


「せやから、」


「愛してる」


「なッッ!///」


「愛してる」


「ッッッ〜///」


耳元で白石の甘い声に囁かれ、謙也は顔を真っ赤に染め、ビクビクと体を震わせた。


そんな謙也の様子に気付いている白石は、謙也を抱きしめる腕に力を込める。




「っ!ちょっ 白石ッ」


「なん?」


「い、一回離れてや!」


「嫌や」


「嫌やって・・・」


「謙也、愛してる」


「っ!!///」




謙也が背後を振り返ろうとした瞬間、

白石の声だけでなく、

息遣いまでもが直接、耳に吹き込まれ、

謙也の心身を刺激する。




「謙也、愛しt」


「っわあぁぁぁぁ!!///」


叫び声を上げて、白石の腕から逃れた謙也は立ち上がり、ハーハーと肩を震わせた。


「謙也、どないしたん?」


「ど、どないしたんやあらへんちゅー話や!

 おまっお前、耳元で囁くなや!」


「えー」


「えーやない!」


「しゃあないな。ほな、」


「おわっ!!」



言葉を切った白石はぐいっと目の前に立つ謙也の腕を引っ張った。



引っ張られた謙也は抵抗する間もなく、

座ったままの白石の胸に飛び込む形となる。




「うぷっ!

 白石、お前何すんね、」


白石の胸に勢いよくぶつかってしまった額を押さえながら、謙也は顔をあげた。




「んッ!?」




その瞬間、白石の唇と謙也の唇が重なり合う。



目を見開く謙也と目を細める白石の視線が絡み合う。



触れるだけのキス。




チュッっと可愛らしいリップ音を立てて、二人の唇は離れていく。




「なっ、えっ・・・」


「謙也、愛してる」


「し、白石、」


「愛してる。

 いや、愛してるなんかじゃ足りひん。

 足りひんくらいに、俺は謙也が好きや」


「〜〜///」


「謙也、」






「・・・・・お、俺も、」


「?」



「俺も、白石のこと、あ、愛しとるし・・・。

 めっちゃ、好きやちゅー話やッッ!!」


「っ!!」




ガバリと正面から抱きついてきた謙也に少々驚きながらも、

白石はぎゅっと謙也の身体を抱きしめた。




ちらりと視線を向ければ、

謙也の耳が今まで以上に熱を帯びて真っ赤になっていた。


白石は、そんな謙也の様子にクスリと笑みを零した。




「謙也、愛してる」





恋人達の甘い時間は、まだ終わりそうにない。

















 『 愛してるの言葉じゃ

   足りないくらいに

     君が好き    』


   (某歌のワンフレーズ)



2012/03/02(金)

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