Novel
□愛
1ページ/1ページ
「謙也〜」
土曜日の昼下がり。
謙也は恋人である白石の家に遊びに来ていた。
ちょうど、白石の家族はそれぞれの私用でおらず、
二人は白石の部屋でお菓子を食べながら、時を過ごしていた。
「謙也〜」
「なん?」
「謙也〜」
「なん?」
後ろから謙也の身体を抱きしめ、謙也の名前を連呼する白石。
「謙也〜」
「せやから、」
「愛してる」
「なッッ!///」
「愛してる」
「ッッッ〜///」
耳元で白石の甘い声に囁かれ、謙也は顔を真っ赤に染め、ビクビクと体を震わせた。
そんな謙也の様子に気付いている白石は、謙也を抱きしめる腕に力を込める。
「っ!ちょっ 白石ッ」
「なん?」
「い、一回離れてや!」
「嫌や」
「嫌やって・・・」
「謙也、愛してる」
「っ!!///」
謙也が背後を振り返ろうとした瞬間、
白石の声だけでなく、
息遣いまでもが直接、耳に吹き込まれ、
謙也の心身を刺激する。
「謙也、愛しt」
「っわあぁぁぁぁ!!///」
叫び声を上げて、白石の腕から逃れた謙也は立ち上がり、ハーハーと肩を震わせた。
「謙也、どないしたん?」
「ど、どないしたんやあらへんちゅー話や!
おまっお前、耳元で囁くなや!」
「えー」
「えーやない!」
「しゃあないな。ほな、」
「おわっ!!」
言葉を切った白石はぐいっと目の前に立つ謙也の腕を引っ張った。
引っ張られた謙也は抵抗する間もなく、
座ったままの白石の胸に飛び込む形となる。
「うぷっ!
白石、お前何すんね、」
白石の胸に勢いよくぶつかってしまった額を押さえながら、謙也は顔をあげた。
「んッ!?」
その瞬間、白石の唇と謙也の唇が重なり合う。
目を見開く謙也と目を細める白石の視線が絡み合う。
触れるだけのキス。
チュッっと可愛らしいリップ音を立てて、二人の唇は離れていく。
「なっ、えっ・・・」
「謙也、愛してる」
「し、白石、」
「愛してる。
いや、愛してるなんかじゃ足りひん。
足りひんくらいに、俺は謙也が好きや」
「〜〜///」
「謙也、」
「・・・・・お、俺も、」
「?」
「俺も、白石のこと、あ、愛しとるし・・・。
めっちゃ、好きやちゅー話やッッ!!」
「っ!!」
ガバリと正面から抱きついてきた謙也に少々驚きながらも、
白石はぎゅっと謙也の身体を抱きしめた。
ちらりと視線を向ければ、
謙也の耳が今まで以上に熱を帯びて真っ赤になっていた。
白石は、そんな謙也の様子にクスリと笑みを零した。
「謙也、愛してる」
恋人達の甘い時間は、まだ終わりそうにない。
『 愛してるの言葉じゃ
足りないくらいに
君が好き 』
(某歌のワンフレーズ)
2012/03/02(金)