作品

□仮想恋愛
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※ハッピーエンドではないです

人が隠し事をする理由として3つの項目が挙げられるみたいだ。
触れられたくなくて隠しているものか、言いたくても黙っておかなければいけないもの。
そして、誰かが訊いてくれるのをそっと期待しながら隠しているか。

さようならの形を言葉にできるなら、今からおやすみをさようならにしよう。
少しでも痛みを和らげるために。
もう仕方がないことだけど、また翌朝から笑って過ごせるように俺はさようならを紡ぐ。

おやすみをさようならの代わりにして、

すやすやと寝息を立てて眠る彼の横顔にときめきを隠せないでいると、なんでか涙が出てきて。

「あぁ、おかしくなってやがる」

なんて呟いて。
情けないほど震えた声とシーツに染み渡る水滴。
強がりきれない、
こんな弱い自分がとことん嫌になる。

外は雨が降っているみたい、
ぽつりぽつり、淡々とノックをするかのようにベットの横の窓に降りかかる。
着いては流れて消えて、その繰り返しだ。

寒気から逃れ温もりを求めるためにサイドに腰を掛け、彼の手を握りしめる。
(子供体温だな…)
俺も眠ってしまおう、そして忘れるんだ。
春くんと居たこと、そしてその日々を。
(無理にでも忘れてしまえ)

でも本当は朝を迎えたくて泣きたいくらいだけど、もう限界なんだってさ。
だから最期に昨夜から部屋に呼んでもらっていっしょに時間を過ごしていたんだよ。
一緒にいると淋しさなんて感じられないからね。
春くんはいつも無防備、俺にでさえこんな姿見せるのに俺が居なくなったらどうするんだよ、馬鹿。

「…春くん、」
「…ん…すぅ」
「は、るくん…」

安心して眠っている姿がどうしようもなく辛くて。
髪の毛をくるくる弄ったり、くしゃくしゃと撫でていると寝惚けている声が漏れた。
それに思わず口角が上がってにやけてしまう。

離れたくないって悲しくなるのはこっちなんだから、ちゃんと理由言えなくてごめんな。
もしちゃんと目が覚めて隣にいたら伝えるから。
そしてら「大好き」っていう証としてまたいっしょに寝ようよ。
絶対照れて「ふざけんな…」って言うだろうけど、そんときは無視して無理やりにでも引きずりこむから。
笑って抱きしめてやるんだから。
そうしてやる、離すもんか。

「…春くん」
「…っ、ちぇる?」
「春くん」
「…んぁ…どうし、た?」
「んんー、なんでもないよ…」
「…?…そぅ、ならいいけど…」

笑って、ずっと笑っていて
俺はそれだけで大丈夫だから

春くん、ずっと笑っていて

「おやすみ」

するり、と握っていた手をほどき重く沈んだ足取りで玄関に向かう。
もう振り返りはしない、
ドアノブを固く握りひねって押し出し、背中でぱたん、とドアが乾いた音を鳴らした。

やっぱり自分は弱い、

自分の涙の代わりに雨が、なんて綺麗な言葉は今は要らない。むしろ不愉快だ。

だけど雨は止んではくれない、ざあざあと音を立てて耳に飛び込んだ。だれに腹を立てている?

(雨が降っていてくれて良かった、)

降り続ける中に頬を伝う涙を隠しきれたことに感謝して。

閑静な住宅街にただひとり嗚咽を漏らして、去っていった相手の名を喚ぶのはいつの日か。



仮想恋愛

ーーーあとがき*
初めまして、小夜です
辞書でお題の意味を調べてきます|・ω・)))
主に(私なりの)ちぇるさん視点で書かせてもらったのでおそらく色々間違っていると思います。
終わりまでぐだんぐだんでごめんなさい、
あと最初の隠し事については伝聞なので正しいのか不明です。
気づいてほしいってありますよね。
こういう場で書かせてもらったことに嬉しく思っています、最後までありがとうございました*
ちぇるさん春さん大好きです
(2012,3,xxx)

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