歌の世界

□オフの日には…
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春歌はソファーに軽く体育座りをし膝を机代わりに五線譜を置く。

「ハルカ」
恋人である美風藍が不満げな声で彼女を呼ぶ。
「なんですか?美風せ…っん、」
先輩、と紡ごうとした口を強引に奪われ紡ごうとした言葉の代わりに甘い吐息を吐く。

長く深いキスが終わり藍は唇を離し春歌の顔を見ると額にキスを一つ落とし今度は顔を彼女の耳元へ寄せた。

「今は作曲禁止だよ、ボクといるんだから曲じゃなくてボクを考えて?」
甘くいつもより少し低い声は妖艶さを纏う声の媚薬。

「…は、い」
顔を真っ赤に染め上げながら素直に頷く。

そして気付けば五線譜は床へ散らばっている。

「それと、二人のときは…名前で呼ぶ約束」
耳に触れそうな唇はゆっくり静かに動く。
彼の吐息が彼女の耳を犯すかのように囁く。
「っ、ぁ、藍、く…ん。そこで、話さないで…下さい…」
「耳だよ?よく聞こえるじゃん。小さな声でも…ね。」
悪そびえもなくただ妖しく笑う彼は確信犯。
春歌はただ激しく抵抗できず諦めた。
前回も同じような経験があるからだ。
その時はかなり抵抗して、彼のドS心を揺さぶりいきなりお姫様抱っこをされ寝室へ連行され、昼から愛を交わした。
またそうなりかねない、と春歌はその時は一つ学習した。
あんな恥ずかしい想いはしたくないと誓い、前回と同じような現状。

「ふーん。賢くなったね。抵抗しなくなった。まぁしてもしなくてもやることにはかわりないけど」
サラッと問題発言をする藍に春歌は固まった。

「固まった、ね。都合がいいや」
抵抗も否定も出来ない彼女をお姫様抱っこをし寝室へ足を向けた。


そっと彼女を横にし、唇にキスをし小さく間は口に舌をねじり混ませる。

「んっ、はぁ、っちゅ…んんっはっ…んっ」
意識が戻ってきた彼女はパチクリと大きな瞳を動かす。

「可愛いよ、ハルカ。意識なくてもキスには反応するんだね。新しいデータだよ」
クスッと妖艶に笑う彼は誰がロボットだと、人の手によって出来たものと思うだろうか。
人に近いロボット――それが美風藍。
『15歳』という設定の彼は春歌に出会い今二年目。
年を重ねるごとに博士が作り出す新しい機能。
容量を軽くしたり日々改良される。

「っ、あ、い…くんっ…!まっ、て…」
服の上で藍の手がゆっくりと怪しく動き出しながらキスを繰り返す。

「ヤダ。文句は…博士に言って。…性欲なんて作った博士にね…?」
「っ…!!」
『15歳』といえば思春期だ。
その男子によくあるのは『性欲』
その機能を藍に植え付けたのは博士で、今春歌に馬乗りしている彼の一部。

「で、もっ…」
それでも抵抗する彼女は逃げようとするが彼の力には敵わない。

「あんまり、抵抗しないでくれる?…力が押さえられない」
力も那月並の腕力、握力があり色々危ない。
それは春歌も知っている。
それに、藍の表情はとても真剣で春歌が傷付かないようにしているのは分かった。
「好きだから、傷付けなくない。ねぇ、ハルカ今は大人しく…ボクに抱かれて?」
彼女はロボットでもアイドルでもなければ人間ではない『美風藍』という存在を好きになった。
そんな彼が囁くひどく甘く真剣な声に春歌は堕ちた――。

堕ちた春歌を藍は愛しそうに目を細め、軽いキスを唇へと落とした。


「…乱れてね、ハルカ。」
言葉とは裏腹な笑顔を見せるとベットがギシッと悲鳴を上げた――。


――いずれ、別れが来るけどその時は笑顔で『サヨナラ』をしよう。
それまでずっとそばにいるよ。


end
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