桜の世界

□生きた証
1ページ/3ページ

“平助君は平助君だよ…
だから、自分を忘れないで”




千鶴が俺に残した最後の言葉


俺はただ泣く事しかできなくって、そのすぐ隣にある

恐怖と不安が俺に襲いかかる


あぁ…俺は光を失ったんだ…

ずっと、目印にしていた千鶴の温かい笑顔





あいつが死んで、俺はその晩羅刹になった

理性を無くしたケダモノになった

光から目を背けた

いっそ死のうかと思った
俺は羅刹だし、そのうち力果てて死ぬ

それを分かってるからこそ、今死んで千鶴に会いに行こうとした



ふと、夜空を見上げた
何度も千鶴と見た夜空
指を指して寄り添って
ずっと眺めていた空


(こんな馬鹿なことしたら千鶴に嫌われちまうな…)


綺麗に夜空を飾る星と月

それから数分見上げていると不思議と理性が戻る


(千鶴が見てる)

そう思うと、千鶴の分まで俺は残された人生を生きよう


悔いのないように


その日から、俺は死ぬまで羅刹にはならなかった
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ