頂き物

□ちぃちゃんを幸せにする会
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ちぃちゃんを幸せにする会。



ある日。
ジュリは琉生の部屋を訪れていた。
いつものように、琉生にブラッシングをしてもらい、心地いい気分になる。
(極楽だ……。ルイのテクニックは最高だな)
そのまま身を委ねて、眠りたくなるが、今日はそうはいかない。
人間の姿になったが、本来のリスの姿と変わらないらしい。

ジュリの飼い主である絵麻が選んだのは琉生だった。
大切に見守ってきた小さな女の子。大切な家族。
いつか、この役目を誰かに渡すことになるのは覚悟していたことだ。
その相手が彼女のキョーダイになったうちの一人で、友である琉生だ。
だからこそ、彼に伝えたい事がある。

「なあ、ルイ」
「ん?ジュリさん、何?」

長いジュリの髪の毛を楽しそうにいじっていた琉生はその手を止め、
ジュリと向き合うように座った。
いままでの、ジュリとのおしゃべりしていたような内容ではなく
真剣な話だと感じたからだ。



「ルイ。ちぃをよろしく頼む。
ルイなら安心してちぃを任せられる」


「うん。僕、かならず
ちぃちゃんを幸せにする。
ジュリさんとの大事な約束。
これは、僕の願いでもある」

「ありがとう。ルイ。
ちぃを幸せにすることも大事だが、
ルイも一緒に幸せになってくれないとダメだからな。
……ちぃとルイの晴れ舞台が見れないのが残念だけどな」

残念そうなどこか諦めのついているような微笑み。


「……ジュリさん、ありがとう。
それと、ごめんなさい。
ジュリさんの役目、僕が奪っちゃった。
ずっと、これだけは謝りたかった」

「ルイ、それは違う。
奪ったんじゃない。
ルイは私からちぃを守り、幸せにするバトンを受け取ったと思えばいい。
このバトンを渡す相手がルイで良かったと思ってる」

「……わかった。
ジュリさんの分……。
ううん、それ以上。
僕の全部でちぃちゃんを幸せにする。
……もう、『ちぃちゃんを守る会』は終わり、だね。
今度は、『ちぃちゃんを幸せにする会』
ジュリさんとの約束、僕の願いの形。
ジュリさんはちぃちゃんの大事な家族で僕の友達。
約束、ぜったいに守る」

「ルイ……。
ああ、ちぃを幸せにするのが友であるルイで良かった。
私はちぃとルイの幸せをずっと祈ってる」


「握手だ、ルイ」
「うん、握手」


これが、『ちぃちゃんを守る会』最後の日で
『ちぃちゃんを幸せにする会』ができた日。
そして、ジュリがいなくなる前日に交わされた約束だった。


END

20131025
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