グラニデ小話

□赤ずきんパロ
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むかしむかしあるところに、赤ずきんと呼ばれる少年がいました。
少年は青い髪の上から真っ赤なずきんを(強制的に)かぶり、いつも片手には魔術書を持っていました。
勉強熱心な子なのです。


天気の良いある日、赤ずきんのお母さんが言いました。

「森のなかで暮らしているおばあさんに、ワインと果物を届けてくださいな」

お母さんは小さな手で大きなバスケットを持ち、なかに入れてあるワインと果物を赤ずきんに見せました。
(お母さん、おばあさんよりおばあさんな歳じゃないかと赤ずきんは思いましたがぐっと堪えました)

正直面倒だ、本を読んでいたいのに。そう赤ずきんは思いましたが、お母さんの目が怖かったので渋々バスケットを受け取り「いってきます」と森へ入って行きました。






***

ゲッゲッ クェークェー

森の住人(人?)たちの声にビクリとする赤ずきん。しきりに「ぼくは美味しくないぞ」と呟いていました。

しばらく歩いていると、草むらからガサガサという音が聞こえてきました。
飛び上がる勢いで硬直した赤ずきんは、声を震わせながら必死に上級魔術を唱え始めます。

「よう、狼登場…って詠唱止めろ!!」

ガサーッと草を掻き分け現れたのは、真っ黒な狼さんでした。
登場直後なのに命の危険を感じた狼は、足下にあった木の棒で得意のジャグリングをし蒼白い真空波を放ちました(さすが)。
それが直撃し後ろへ転んだ赤ずきんは、バスケットから零れたリンゴをあわてて狼へ投げ「ぼくを食うくらいなら果物を食べろ!」と声を上げました。
そんじゃ遠慮なく、と狼はシャリッとリンゴを一口。そしていまだ転がったままの赤ずきんのそばへしゃがみ込み、森のなかを指さしました。

「アンタ、ばあさんのお見舞いに行くんだろ。だったらこの先にある花畑で花でも摘んでってやりな。喜ぶだろうよ」

何故それを知っているんだとも思いましたが、狼のその言葉に赤ずきんは喜びの表情を浮かべるおばあさんを思い描きました。

「そ、そうだな。それもいい。よし、摘んでいってやるか」

なにを妄…想像したのか若干頬を赤らめた赤ずきんは、狼の言った方向へ歩いて行ってしまいました。


「……ちょろいもんだな」

後に残った狼は姿の見えなくなった赤ずきんを笑うと、木とリンゴを手にしたままおばあさんの家へ先回りしてしまいました。






***

「ばあさん、赤ずきんが来たぜ」

ガンガンとドアをノックし、声も変えることなく狼は言いました(どこが赤ずきんだ)。
しかしおばあさんからの反応はありません。
首を傾げノブを捻ると、キィと音を立てドアは開いてしまいました。

「無用心だな」

そう言いつつもズカズカと侵入する狼。大胆すぎて気持ちが良いくらいでした。

壁に掛かる数々の刃物。卓上に並ぶ草や粉。砥石や刀もあちこちにあり、狼はおばあさんの正体を心底疑問に思いました。
しかし今は空腹を満たすが先。おばあさんの職業など知ったこっちゃありません。
僅かに上下するベッドの膨らみへ近寄ると、狼はおばあさんの顔を覗き込みました。
すぅ、と寝息を立てていることを確認し(やけに若々しいばあさんだな)布団を勢いよく捲りました。

「………」

狼としては、おばあさんの驚く声をおかずにいただくつもりだったのですが、叫ぶどころか目を覚ます気配も感じられません。
ただ小さく唸り、丸くなるだけでした。

「おい、ばあさん」

声を掛けても無反応。
おもしろくないと息を吐くと、狼は再度おばあさんの顔を見やりました。

「……くぅ…」
「……!!!」

まるで小動物のように眠るおばあさんに、狼は一気に壁ぎわまで後退してしまいました。

「ばあさん、かわいい…!!」

バクバクと煩い心臓を押さえ、柄にもなく頬を染める狼。獣が老女に恋した瞬間でした(何か嫌だ)。

狼はそろそろとベッドに近づくと、静かにおばあさんに覆い被さりました。

「ばあさん、起きろよ」

軽く肩を叩いてもおばあさんは目を覚ましません。ただ小さく身動ぐだけです。
狼はごくりと唾を飲み込むと、おばあさんの小さな耳に口を近付け熱っぽい吐息を流し込みました。

「…本当に、食っちまうぞ……」

さすがにそれにはびくりと反応すると、ゆっくり目を開いたおばあさん。
その瞬間、バタンッとドアが開き何かが狼の頭上を通過しました。

「ぐぃ〜ひっひ!猟師の登場だわよ!野獣黒狼はどこ!?」

突然のことに目を見開く狼。おばあさんにいたっては何が何だかわからないとポカンとしていました。

「おばあさん大丈夫か!狼め、よくも騙してくれたな〜!」
「げ、赤ずきん…」

銃を両手ににやりと笑う猟師の後ろから、花を腕いっぱいに抱える赤ずきんが現れました。

「騙してはいねぇよ!花貰って嬉しくねぇはずは…」
「問答無用!ツインバレット!」

必死に事実を述べようとする狼に、猟師は怒涛の10連射をお見舞いします。赤ずきんは「おばあさんまで巻き込むな〜!」と猟師を止めようとしていましたが、力及ばず「邪魔よ」と払われ転がってしまいました。

「ばあさん、掴まってろよ!」

狼はおばあさんを抱き上げると弾を横にかわします。途端に布団は蜂の巣状態になり、羽毛がふわふわと舞い上がりました。

「っアンタ、何者だ!其れに、あの猟師は…っ」

さっぱり状況を理解できていないおばあさんは、狼の手から逃れようと藻掻いていました。

「詳しい説明は後だ!!」

狼は持って来ていた木の棒を手にし、銃弾を際どいところで弾いていきます(神業)。

「なかなかやるわね〜!これならどう!?セッシブバレット!!」

狼の手慣れた動きに楽しげに笑うと、猟師は本気とばかりに銃を鳴らしました。
10連射でギリギリだったところの16連射。さすがの狼も、本気でやべえ、と冷や汗を垂らしました。

「詳細を知るには先ず猟師か…!」

おばあさんはどこからともなく一本の刃物を取り出すと、猟師に向かって一直線に投げました。

「きゃ!」

不思議な形をした刃物は、猟師の右銃を弾き床に転がしました。

「蒼破刃!」

隙を突き狼が(棒から)放った真空波が続いて左銃を落とすと、猟師は赤ずきんをにらみ上げました。

「ちょっと!悪い狼がいるって言うから来てやったのに何よ!ばあさんと連携してんじゃん!痛いし!」
「そ、そんな、たしかにこいつはおばあさんを食べようと…」

言い合いを始めた猟師と赤ずきんから目を逸らすと、おばあさんは謎の狼を見上げました。

「して、アンタは何者だ。不法侵入も甚だしい」

すっかり荒れ果てた自宅に溜め息を吐くと仁王立ちで問いだしました。

「まぁ、簡単に言うとばあさんに惚れた一匹狼ってところだな」
「なっ…!?」

恥ずかしげもなく言い放った狼に、おばあさんは目を見開きよろよろと後退していきました。

「狼は…未亡人の老女好きなのか…」
「そこかよ」

信じられないと頭を押さえるおばあさん。狼はそんなおばあさんを見て笑うと、よっこらせとおばあさんを肩に担ぎ上げました。

「な、何をする!老女なんて食べても美味しく無いぞ!餌にするなら其処に居る子供の赤ずきんにしろ!」
「おばあさん、ぼくを売る気か!」

そのやりとりに猟師は「あたしだけ除け者!?こんな扱い嫌い!」と騒いでいました。
狼はおばあさんを担いだまま少しだけ考える素振りを見せると、次には悪い笑みを浮かべやがりました。

「不味いかどうかは食ってみねぇとわからねぇだろ?」

おばあさんと赤ずきんが文句を言うより速く、猟師の銃撃により大破した窓から外へ狼はひらりと逃げて行きました。もちろんおばあさんを担いだまま。
あまりに衝撃的なことに硬直してしまっていた赤ずきんは、はっとして窓から身を乗り出しました。

「おばあさーん!!…っくそ!このままじゃお母さんに怒られてしまうじゃないか!おい猟師!お前、なんとかしてくれよ!」

放置されすっかり拗ねていた猟師は、赤ずきんの言動にプッツンしてしまいました。

「あんた人にばっか頼ってないで自分でなんとかしなさいよぉぉ!!!」
「う、うわ!やめろぉぉ!!!」

再び聞こえてくる銃弾の音。
おばあさんの家はどこもかしこも蜂の巣になってしまいました。






そして歳月は流れ。


「赤ずきんさん、珍しくおばあさんからお手紙が届いたわよ」

お母さんがパタパタと羽根を動かし、一枚の紙を赤ずきんに渡しました。

「おばあさん、生きていたのか!なになに…『幸せに暮らしています』…って、凄く殴り書きだな。
でもよかったな。狼に食べられなかったみたいで」

おばあさんの無事を確認し心のつっかえが取れた赤ずきんは、読みかけだった魔術書をパラパラと捲りました。
その言葉を聞いたお母さんは、手紙を手に取ると小さな呟きを口にしました。

「“食べられた”から幸せでいるのでしょうね」
「ん?何か言ったか?」

赤ずきんにはまだ早いわね。お母さんはうふふと笑うとキッチンへ飛んで行きました。
残された赤ずきんは疑問符を浮かべましたが、すぐに忘れると上級魔術の勉強に没頭しました。


めでたしめでたし。






***

カイ「オレが老女とは…」

ユーリ「狼とばあさんのラブストーリーなんて斬新で良いじゃねぇか」

キール「完全に犯罪だろ!詐欺に不法侵入に強姦未遂そして拉致なんて!」

ユ「結果オーライだろ」

イリア「あたしってば出番少ないし!次はあたしが主役級のパロディやるわよ!」

カ「少ないかもしれないが存在感は十二分に有ったぞ。因みに言うが、暴れ過ぎだ」

イ「あれくらいやらなきゃリアリティ出ないでしょ〜」

ユ「いや、マジでこっちは危なかったぞ…」

キ「というか…カイを襲うシーン、あんなのじゃないはずだぞ!」

ユ「あぁ、わりぃ。オレがやるとああなっちまうみたいだわ」

イ「とんだエロアドリブ野郎ね」

カ「(もう帰っても良いのだろうか…)」






fin...








‐‐‐‐‐
カイ篇パーティーで赤ずきんパロ!

キール:赤ずきん
ユーリ:狼
カ イ:おばあさん
イリア:猟師
パニール(友情出演):お母さん
でお送りしました。

あぁ、楽しかった(笑

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