Novel

□題名未定(未完)
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平原は、限りなく広いその体を寝かせている。

びっしりと一面に生えそろった草は、突風に揺られて忙しなく左右に動いている。

そこには、一つの大きな街があった。


分厚く、高い壁に囲まれた街


まるで、そこだけ別の空間であるかのような、その街。

二人の男は、その前に立っていた。

まるで場違いな、茶色のマントを羽織った二人。

先から微動だにしないその姿は、そこにたたずむ木のようにも見える。

「・・・矢張り名残惜しいか?
メフィスト」

低く美しい声が、突然投げかけられた。

声の主は、スッと通った鼻筋と、鋭い切れ目の男。

吹き荒れる風に、彼の白髪が乱れ舞った。

吸い込まれるような赤と藍の邪眼で、隣の男を見る。

自嘲気味な笑みを浮かべた金髪の彼は、眼前の街に目を向け、呟く。

「今更・・・」

やや高い、それでもよく通る声。

白髪の男とは逆の声音である。

「この地に踏み入ろうとは思っちゃいない。
ただ・・・」

悲しげに目を細めた。

「やっぱり未練ってのは残るもんだな」

スッ

辛そうな笑みをもう一人に向け、明るい声で言った。

「・・・さっさといこう、ジャック」

「・・・あぁ」


ざくっ ざくっ ざくっ


草を踏み分け、彼等は進む。

吹き荒ぶ風は、二人の纏った茶色のマントを今にも引き剥がそうとする。

それでも、彼等は負けずに進む。


その先に


彼等を待つ『もの』がいる限り



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