星狐

□○○は風邪を引かない
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「はっくしっ」

 メインデッキに壮大なくしゃみが響き渡る。

「……はっくし」
「ファルコ、風邪か?」

 口元(というか嘴)を抑え、目をじんわりとさせているくしゃみの発信源に、俺は問いかけた。
 問いかけられた彼はずびーと鼻を啜り、「違ぇよ」と無愛想に反応する。
 それを見て、俺は微笑む。

「それは良かった。○○は風邪を引かないってよく言うけれど」
「てめえその○○をはっきり言ってみやがれ」
「嫌だ。言ったら殴るだろ?」
「当たり前だ」

 指をバキバキと鳴らすファルコ。言わなくても分かってるんじゃないかと言ってやると、彼はフン、とそっぽを向いてしまった。

「でも」
「あ?」

 俺が言葉を紡ぐようにして振り向くと、ファルコは「まだ、からかいたりねえのか」といいたそうな顔をした。
 それにも微笑みをつくり、

「ファルコが風邪引いたら、俺が看病してあげるさ」

 「つきっきりで」と付け足すと、ファルコは、

「お断りだ」

 とまたしてもそっぽを向いてしまった。

 だが俺は見逃さなかった―――

 ―――ファルコの顔が、赤く染まっていたのを。


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