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□砕けた日常
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「や、止めて下さい!!銀さん!!」
「銀ちゃん!!」
血塗れになる真選組。しかし、銀時は木刀を振るのを止めない。そんな銀時に新八と神楽の二人はしがみつく。
攻撃を止め、二人を見る。
二人の瞳には恐怖や畏怖といった感情が映し出されていた。しがみつく腕も心なしか震えている。
「……っ!!」
止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ!!
そんな瞳で俺を見るな!!
そんな腕で俺にしがみつくな!!
二人の視線に耐えられなくなった銀時は、しがみつく腕を振り切り万事屋を出て行く。
後ろから、自分を呼び止める声が聞こえた気がした。
暫く走りその内雨が降り出した。冷たい雫が銀時を濡らす。
「……銀時?」
ふと聞き覚えのある声が聞こえる。顔を上げれば、傘を差した桂が立っていた。
「どうしたのだ、そんなに濡れて…」
桂はそう言いながら銀時に近づいた。その時銀時の異変に気付く。
「銀時、何があった?酷い顔だぞ」
「ヅラ……」
力なく笑う銀時。
「……白夜叉って、バレた…」
小さくそう言うと銀時は気を失う。
「銀時!!」
慌てて桂は銀時を受け止める。銀時の体は、冷え切っていた。
隠れ家に戻り銀時を寝かせ、部下たちに銀時に何があったのかを調べさせる。すると、意外にも早く事の真相が分かった。
「……何ということだ…」
桂は頭を抱える。
真選組のことは予想していたが、まさかあの子ども達まで銀時を拒絶したとは。
桂はどうしようもない憤りを感じる。
「とにかく、あやつを呼ぶか」
今の銀時に必要なのは、昔から何かと銀時を上手く泣かせていたあの男だろう。
桂は電話を掛けた。
銀時は目を覚ます。見慣れない天井に銀時は倒れる前の記憶を思いだそうとする。
(確か…昔のことがバレて、その後ヅラの奴に会って……)
起きたばかりの頭で必死に考える。その時、隣に懐かしい気配を感じ目線を向けた。
「…目ェ覚めたか、銀時ィ」
「高、すぎ…?」
なんでここに、と言う銀時に高杉は静かに話し出す。
「ヅラから連絡があってなァ、お前バレたんだってなァ…」
「……あぁ」
小さく返事をすると、銀時は自嘲気味に口元を歪める。
「ハハッ、ざまぁねえよな…」
「…………」
「受け止めてくれたと思ったんだ…、なのにそれは勘違いでよ」
「……銀時」
「そうだと分かったら、何か馬鹿らしくなっちまって…気付いたら家飛び出してて」
「…銀時」
「逃げたんだ。逃げ出したんだ、あいつらから、あの目から」
「銀時」
ふわりと高杉は銀時を抱き締める。優しく、包み込むように。
「苦しいなら苦しいって言え、悲しいなら悲しいって言え」
柔らかく、しょうがないというように高杉は笑う。
「テメーは昔から泣くのが下手くそだなァ」
高杉の言葉に銀時は涙を流す。
ぽろぽろ、ぽろぽろと。
「…あ、あぁあ……っ!!」
銀時の嗚咽が部屋に響いた。
「高杉ー、飯だぞー」
「おー」
銀時の言葉に高杉は軽く返事をする。
部屋に向かえば、もう既に高杉以外の三人が席についていた。
「遅いぞ、高杉」
「冷めてしまうぜよー」
「うっせ」
「いいから、早く座れって」
銀時に促され高杉はやっと席につく。それを確認した銀時は手を合わせる。
「では、いただきます」
「「「いただきます」」」
あの後、高杉、銀時、桂は故郷である萩で暮らしていた。もう銀時を傷つけた者たちがいる所に居たくないというのもあったし、前々から萩にも戻りたいという願望もあったからだ。
萩に戻り暫くしてから、どこから聞いてきたのか坂本も萩にやってきて、一緒に暮らすようになった。
「高杉、醤油取って」
「ん。」
「どうも」
笑顔でお礼を述べる銀時。あれから、少しずつだが以前のように笑えるようになっていった。
銀時以外の三人は願う。
早くこの銀色に本当の笑顔を、と。
砕けた日常
(笑っておくれ、それが僕たちの原動力)
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