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□牡丹雪は泣く
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『こんな所に隠し部屋があっただなんて…』
『気づかなかったでござるな…』
『もしかして、このところ晋助様が自室にいなかったのって、ここで過ごしていたんスかね?』
(この声は確か高杉の…)
予想外の人物たちに驚いていれば、入り口が開く。
「…失礼するでござ、」
初めに入ってきたのは河上万斉。それに続いて来島また子、武市変平太が顔を覗かせる。
三人とも部屋に銀時がいたことに驚き、目を丸くする。
「し、白夜叉!!?」
「あー…」
銀時は何と返事をすべきか迷う。隠し部屋に連れてくるぐらいだったので、部下たちには秘密だったようだが、まさかここでバレてしまうとは。
「貴様っ!!何故、ここにいるッスか!?」
また子が声を荒げる。
そんなこと言われても、自分はそちらの上司に拉致されてきただけだ。自分に罪は無い。
一人が困惑、三人が警戒していると、こんなことになった原因の男が戻ってきた。
「…テメーら、何でこんな所にいやがる」
「高杉……」
銀時は高杉の名を呼ぶ。
「…晋助、これはどういう」
「…チッ」
高杉は苛立たしげに舌打ちをし、ハァと溜め息を吐くと銀時に近づく。
「悪いなァ、バレちまったからテメー帰してやるよ」
「…いきなり拉致ったと思えば、今度はいきなり帰すか。勝手な野郎だな」
「ハッ、そんなこと知ってるだろう」
「あぁ、嫌というほど知ってるさ」
銀時は立ち上がり、高杉の横を抜ける。入り口近くに立っていた万斉たちは顔を驚きに染めていた。恐らく、先ほどの会話で高杉が銀時を拉致してきたという事実に驚いているのだろう。そんな三人を横目に銀時は部屋を出て行った。
外に出れば、雪が小さな粒から大きな粒へと変化していた。
牡丹雪だ。
しかし、穏やかに降るのは変わらずそのまま足を踏み出そうとする。その時、後ろからバンッという乱暴に入り口が開けられたら音がし、銀時は振り返る。
「白夜叉!!」
立っていたのは、来島また子だった。腕に紅い番傘を抱えている。
「これ、晋助様からッス」
眉根を寄せながら傘を銀時に渡す。銀時は、黙ってそれを受け取った。
「『貸してやる』だそうッス」
また子が悔しげに唇を噛む。
「……貸してやる、ね…」
それは、次もあるという印。
銀時は悲しげに眉を寄せ、笑みを浮かべる。
「あいつは、俺をどうしたいのかね…」
もう、昔のようには傍にいられないというのに。
銀時は受け取った傘を静かに開くと黙って歩き出した。
牡丹雪は泣く
(雪よ、どうかこの想いを隠しておくれ)
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