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□慈愛の笑顔で
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高杉が部屋に戻って来た頃には、銀時は言われた通り大人しく寝ていた。
襖を閉め銀時のすぐ隣に腰を下ろす。顔を覗き込めば息苦しそうに息を吐いていた。
怪我が原因で熱が出ているのだろう。
「言わんこっちゃねェ…」
高杉は顔をしかめながら呟く。そうして、部屋に戻る際に持ってきた桶の中の水で、新しい手拭いを濡らし額にのせる。
銀時は怪我をしても余り人に頼らない。いや、頼ることが出来ないというのが正しいだろう。
『白夜叉』が活躍をすれば隊士たちの士気が上がる、しかし『白夜叉』が怪我をすれば隊士たちは動揺し士気も下がる。
『白夜叉』というのは、良くも悪くも士気に影響するのだ。
熱のせいで温まった手拭いを繰り返し水で濡らす。すると、うっすらと銀時が目を覚ました。紅い瞳が覗く。
「…ん、…たか、杉?」
「あァ、目ェ覚めたか」
「ん…」
まだ、熱で頭がぼうっとするのだろう。呂律が回っていない。
高杉は銀時の頬に触れる。
「まだ、熱はあるな…」
「あ……」
「何だァ?」
高杉が聞く。
「……高杉の、手…冷たくて、気持ちい…」
そう言うと銀時は高杉の手に擦りよる。高杉は銀時の意外な行動に目を丸くするが、すぐに目を細め「ククッ」と喉を鳴らす。
「そうかい」
「俺さ……」
「あァ?」
銀時はふわりと笑う。
「結構、高杉の手…好き、なんだよね…」
本日二度目の驚きに目を丸くする高杉に、あとは…、と続ける銀時。
「…目も、髪も、声も……みんな好き」
熱のせいでこんなにも素直になっているのだろうか。高杉は自分の顔が熱くなるのを感じた。
とりあえず、
(今度、何か甘味でも買ってきてやるか…)
慈愛の笑顔で
(それは、反則です)
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