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□雨恋
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現代
雨は昔から苦手だった。
何もかもその音で消してしまって、世界で自分が一人になったような。
そんな気がして。
幼い頃からどうしても、その感覚だけは慣れず酷く不安になった。
(…早く、止めよコノヤロー)
そんなことを考えながら、恨みがましく曇天の空を睨むも、それで雨が止むというわけでもなく。
思わず溜め息を零す。憂鬱で仕方ない。
昔からこんな雨の日は、黙ってあの男が傍にいた。自分から行ったこともあったし、向こうから来ることもあった。
普段から素直でない自覚はあるが、今なら素直に甘えられる気がする。
まあ、来るはずもないのだけれど。
もう一度、大きな溜め息をついて背もたれに寄りかかる。その時、声をかけられた。
「銀ちゃん」
「あ?なんだ、かぐ…」
声をかけてきたであろう少女の名前を呼ぼうとしたと同時に、首の後ろから強い衝撃が走った。
「ぐあっ…!?」
いきなりのことで対処が出来ない。
「ごめんネ銀ちゃん。ちょっとの我慢アル」
遠くなる意識のなか、そんな言葉を聞いたが何のことだかさっぱり。
(あぁ…やっぱり、)
雨は苦手だ。
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