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□1.眩む朝
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五月蝿く泣き続ける蝉の声


暑く照りつける太陽


青い青い空


ひまわり


眩むほどの一面のひまわり






──おめでとう

──おめでとう


『  』









そうして、意識が浮上する。
見慣れた染みのある天井と香る味噌汁の香りに刺激されて段々と意識が覚醒していく。


「あー…」


窓から差し込む光が眩しくて遮るように腕を顔に翳してすっと目を細めた。懐かしい夢を見たものだ。幼い頃のアイツとの思い出。
幸せで幸せで、堪らなく暖かくて。きっと自分たちが一番幸せだった頃。そんな時がいつまでも続くのだと疑わなかった。永遠なんてそんなものあるはずないのに。

しばらく夢の余韻に浸っていれば足音が聞こえて、次の瞬間には襖が開かれ新八が顔を出した。


「銀さーん、起きてください。ご飯出来ましたよー」

「おー…」

「あれ、珍しいですね。起きてたんですか」

「銀さんだって起きるときは起きますぅ」

「それが毎日続けばいいんですけどね…」


僕、神楽ちゃん起こしてきますねと言って出て行く新八のあとを追うように身体を起こし部屋から出る。最初に目に付いたのは机に並べられた暖かな朝食で、昨日まで卵かけご飯の毎日だった自分とって久々のまともな朝食だった。

ふと、今日は何日だったか。確か仕事が入っていたことを思い出してカレンダーへと視線を向ける。


「あ、」


昨日までの日付にばってんの印がついているカレンダーを見ながら今日の日付に思わず声を漏らした。成る程、だからあんな夢を見たのかもしれない。すっと印刷された数字をなぞるように指を滑らせる。


「銀ちゃん?」

「っ…あ、あぁ神楽。おはようさん」

「おはようアル」


いつの間にか新八に起こされた神楽が後ろにいて思わずビクリとしたが、平静を保っていつものように気怠げな態度をとる。しかし、流石は夜兎なのかそれとも鋭い女の勘というやつなのか。目聡く自分の動揺にその深い青の瞳を光らせる。


「どうしたアルか、銀ちゃん?なんか、気になることでもあったアルか?」


じっと曇りのない青で見詰められ、居心地の悪さを感じながらも誤魔化すように頭を撫でつける。


「何もねえよ。ただ今日は久しぶりに仕事が入ってたこと思い出して、面倒くせえなとか思っただけだ」

「いや、仕事なんだから面倒くさいも何もないでしょう」

「仕方ねえだろー、面倒くさいと感じるのは人間の本能だ。生理現象なんだよ」

「そんなこと言ったら世の中の人、殆どがやる気がない人たちじゃないですか!無いからね!そんなこと!!」

「いやいやいや、実際の所?人間って奴はそういうもんだと思うよ?銀さん確信してるからね」

「意味が分かりません」

「あぁ?馬っ鹿おめぇ、そんなんだからいつまでもたっても新八なんだよ」

「どういう意味だコラアアアアア!!!」


叫ぶ新八の声をわざとらしく耳を塞いで顔を顰める。そうして、いつものようにソファに腰を落ち着かせ箸を取った。


「いいから、とっとと食って行くぞー」

「ハァ…アンタって人は全く……、ほら神楽ちゃんも座って座って」


新八に促され向かい側に座った神楽をちらりと見れば、どこか腑に落ちないようであったがどうやら追及してこないらしい。

あぁ、良かった。




啜った味噌汁がいつもより少し、しょっぱく感じた。








眩む朝
(気付いたのは、今日があの男の生まれた日だということ)




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