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□2.眩む視界
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先生や桂、高杉たちと離れてしまった。初めて来る祭りに気持ちが高揚していたことは自覚していたが、まさかこんなことになってしまうなど考えていなかった。

きょろきょろと当たりを見回すが慣れ親しんだ姿は見つからない。一人など、それはもう今よりも幼い物心ついた時から慣れていたものだったはずなのに、今は不安で不安で仕方がない。

あの暖かな自分の手を握ってくれていた手の持ち主はどこにいってしまったのだろう。
自分がいなくなったことに気付いて捜してくれているだろうか。心配しているだろうか。

きっとそうであろうはずなのにどうしても不安は拭えない。ぎゅっと師が用意してくれた藍色の浴衣を握る。

『あぁ、よく似合っていますね』と優しく笑った先生の顔を思い浮かべて目頭が熱くなる。涙をこぼさないよう腕で目元を押さえながらその場にしゃがみこんだ。


あぁ、早く。

誰か来てくれ。

不安で寂しくて悲しくてしょうがない。

まるで自分が別の場所へ放り込まれた気分だ。






どのくらい、そうしていただろうか。
ほんの数分だったかもしれないが、自分には何時間にも長く感じたときだった。
ざりっという草履が擦れる音がして、すぐ自分の目の前に誰かが来たのが分かった。


「ここにいやかったのか…バカ銀」


聞き慣れた声と喧嘩や馬鹿にするときに言ってくる自分の愛称にばっと勢いよく顔を上げその人物を視界に入れた。


「高、すぎ……」

「ったく、勝手にはぐれてんじゃねえよ、先生もヅラも心配してたんだぞ!」

「ごめ、」

「謝んのは先生んとこに行ってからだ!」


そう言ってほらと差し伸べられる手に思わず瞬きをする。そんな自分の行動に苛立ってかぐっと腕を伸ばしてきて無理やり立ち上がらせられ引っ張られた。


「行くぞ」


短くも力強い言葉に一気に涙腺は崩壊して情けなくもぼろぼろと泣いてしまう。いきなり泣き出した自分に柄にもなく慌てる高杉が可笑しかった。


そうして高杉の誕生日が明日だということをあの後、先生から聞いて目一杯祝ってやろうと、そう決めたのだった。






眩む視界
(何故か、背中が大きく見えた)




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