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□3.眩む向日葵
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少し遠出をしてみた。

江戸から離れまだまだ、天人も開拓に着手していない山の奥。仕事はとりあえず終わらせてきた。少し出掛けてくる、と子どもたち二人に言ったら何か怪しみながらも送り出してくれた。神楽なんかは私も行くと聞かなかったが上手く新八が宥めていた。何かお土産でも買っていくか。

そんなことをつらつらと考えている間に目的地についた。目の前には向日葵。眩むほどのたくさんの向日葵。


「おー…残ってたか」


それは、重畳重畳。使い方があっているのか分からないけれど。一歩向日葵の群生に踏み出す。夏の強い日差しにも負けず真っ直ぐに空へと伸びる姿はあの男を思い出させた。

とことん自分を通して真っ直ぐに将来を見据えていた。逆境など跳ね返しそこに踏ん張る姿に尊敬した。一度たりともそんなこと言ったことはなかったし、これからも言うつもりはない。

少し前に屈み向日葵を根本から一本一本摘んでいく。あっという間に腕に抱えきれなくなって持参した紐でぎゅっと纏め上げた。

そうしてずっと後ろで自分を見ていた男を呼んだ。


「いつまで、そこにいんだ。ここに来いよ」


そう言うと男は近付いてくる。

草履の擦れる音とガサガサという向日葵を掻き分ける音。それがぴたりと止んだと同時に向日葵の花束を持って振り返る。


「よお、久しぶり。次会った時斬るとかいったけど、それはまた今度」


にこりと笑う。


「とりあえずは、まあ…」


男はその鉄色の瞳を丸くしながらこちらを見てくる。



「誕生日、おめでとう」



そうして自分は花束を差し出した。







眩む向日葵
(どこまでも、真っ直ぐで馬鹿な愛おしい貴方に差し上げます)




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