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□心配して損した!
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雨の降る中、ずぶ濡れになりながらも探す。

『……ここも、ダメか…。…ックソ!生きてる奴はいねぇのか…!!』

地面に転がるのはどれも冷たくなった者達ばかりだ。
横たわり、折り重なり、顔の判別の付かぬ者も多く、その中を銀時は用心深く歩く。
またいつ、天人が襲ってくるかもわからぬこの戦場跡地で一人で居るなど自殺行為とも取れる。
それでも、銀時は探さずには居られない。生きてるものを見逃してなるものか、と。

生存者の捜索に気を取られている銀時は気付かない。
ふらりと歩く銀時の後をつける三つの影に。
徐々に距離を摘め、タイミングを測ってるかのような、その三つの影が、動く。


『死ねぇぇええ、白夜叉ァァアア!!』

人間の倍もありそうな巨体が三つ、銀時に襲い掛かる。
反応が遅れた銀時は、振り向きざまに刀を抜こうとして、目の前に影が出来て目を瞠る。

見慣れた背中に、安堵した。
競り合いの結果、巨体を持つ天人は易々と斬り捨てられて事切れる。
それを見た残りの天人は、恐ろしくなったのか我先にと逃げていく。だが、それで許す男ではない。

逃げる天人をいとも容易くその刃に掛けると、男は漸く振り向いた。


『……戦場で油断してんじゃねぇ、お前は。…だからバカだって言われるんだ』

男の言葉に、バツの悪そうな顔で目を背ける銀時に、小さな溜息をつくと男は銀時に近づいた。

『こんなずぶ濡れで、血の臭いぷんぷんさせて帰ったら、またズラにどやされるだろうなぁ…銀時。…いい加減、帰るぞ』

『……まだ、探す…』

『ダメだ。例え生きてた奴が居ただろうと、もう生きちゃいねぇよ。…あれかた何刻たってると思ってる』

『でも!どっかに逃げ延びてる奴等が居るかもしれねぇだろ!?』

『……それで?そいつが怪我負ってたらどうする。オメェ一人で支えられねぇくらいの人数が居たら?全員背負っていくのかぁ?』

『……』

『いい加減学べ。…そんな甘っちょろいことしてると、体がいくつあっても足りねぇんだよ。戦力にならねぇ怪我人連れて帰るより、戦力になるお前が、次に備えて十分休む事の方が先だろう。…何回言わせんだ』


男の言葉に、今度こそ言葉を紡ぐ銀時の手を掴むと、力のままに引っ張り歩く。

『……俺ァ、生きてるか死んでるかわかんねぇ奴等より、オメェのが心配なんだよ。……オメェは俺の生きる希望だぁ。…勝手に死ぬんじゃねぇぞ』

その言葉に、銀時は目を大きく見開き、そして、泣きそうな顔で笑う。
師を失った絶望を味わった二人だからこそ、生と言うものに希望を見出せずに居た。
いつ死んでもいい。
そう思っていた二人は、互いを生きる糧にした。そうする事で、まだ生きていようと思うのだ。

この地獄のような戦場でも、希望があれば生きていける気がした。

二人は、どしゃぶりの雨の中、互いの手を緩く握り、去っていく。



**************

一部始終を見ていた神楽や新八、真選組の面子や鬼兵隊の面子も、言葉をなくす。
銀時が白夜叉と呼ばれていたりだとか、後から来た男が鬼兵隊の総督だったとか、今よりうんと若い二人だったとか、此処は過去だったのかと、色々と目に、耳に入ってきたが、そのどれもが映画のワンシーンのように思えた。

「………銀ちゃん、泣きそうだったアル」

「うん」

「……一緒に居たの、片目アル」

「……うん」

「片目も、泣きそうだったネ」

「…そうだね」

「……でも、仲良さそうだたヨ」

「うん」

「……銀ちゃん、今…寂しいのかな」

「……。どうだろうね、あの人…僕等には何も言わないから…」

新八と神楽のやりとりを聞き、大人たちは口を閉ざす。
人の面倒ごとに首をつっこむあの男は、確かに自分の事は何もさらけ出さないと気付いたから。
鬼兵隊の総督である高杉と白夜叉だと言う銀時が旧知の仲だと言うことを知っていた鬼兵隊ですら、ここまでの仲だとは思っていなかった。
お互いがお互いを必要としている光景は、現代の二人からは全く想像がつかなくて、なんだか無意識に胸が締め付けられる心地が鬼島を襲った。

「……このままで、いいんすか?晋助様…」


鬼島の呟きは、静寂に解けて消えた。





その後、いつの間にか辺りはもとの山だったがのだが、やる気がそがれた鬼兵隊は早々に撤収、土方や沖田も、それを追うことなく、江戸へ帰るはめに。神楽と新八は、お登勢に言われた筍掘りに行ったのだが、取れたのはわずかに二本。
胸の中が晴れないまま、二人は帰路についたのだった。







後にわかったことなのだが、銀時は密かに高杉と通じていたとか。
それを知った子ども達が銀時を殴る蹴るしたのは、言うまでも無い。



(心配したのに!)
(心配してた時間を返すアル!!)

(……えぇー?俺何か悪いことした?)

((しました!!/したアル!!))








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