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□敵同士のハズが
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闇に包まれた江戸の港に一隻の怪しげな船が停留していた。
その船のハッチは開かれていて、一人の男が近付く。


「おーい、来てやったぞー」


船に向かって叫ぶのは夜だと言うのにキラキラ輝く銀色の天然パーマに赤い瞳をもった男、坂田銀時。


暫くして船からもう一人の男が現れた。


「よォ。待ってたぜ?…入れよ」


紫がかった黒い髪に左目を包帯で隠し、女物の上等な着流しを着た男、高杉晋助はニヤリと口角を上げた。


「んじゃ、遠慮なく」


再び船に戻って行く高杉の後を銀時は追いかける。


船の中は現在夜中で、皆熟睡しているせいか人が一人も通らず、銀時は少しばかり安心する。


紅桜の一件以来、銀時、桂は高杉率いる鬼兵隊と春雨とは完全に敵対したため、鬼兵隊の船の中に銀時がいるとなったら大騒ぎである。

なのに何故銀時が船に、しかも袂を別った高杉といるのかというと。
実はこの二人は袂を別ったといっても完全には一度繋がった絆を断ち切れず、否、別の思いがお互いにあり、こうして時々密かに会っているのである。


とは言ってもいつも会う場所は誰にも見つからないような宿とかなのだが、今日は高杉の誘いで初めて船に来た。


「んなビビらなくても見つかりゃしねェよ」


「ビビってねェよ!つーかオメェの船広すぎだろ。いつになったら着くんだ?」


「もう目の前だ」


「目の前…」


案内されたのは金属や鉄で覆われた船内と明らかに場違いな襖。
そこを開けば中は一つの旅館のような部屋だった。


「すげェな…」


「だろ?さっさと中入れ」


「お…おう」


部屋の光景に圧倒されつつも中に入ると高杉は襖を閉めた。


「ここ、お前の部屋?」


「あァ。…ほらよ」


「あ、サンキュー」


銀時の質問に頷きつつ、置いてあった酒瓶と猪口を渡し、腰を降ろした。


「じゃー飲みますか」


と、銀時が酒を飲もうとしたとき、ずいっと高杉が銀時に猪口を押し付けた。


「テメェ…自分で入れろや」


「いいじゃねェか。久々の酒だろ?」


「関係なくね?」


文句をいいつつも銀時は高杉の猪口に酒を入れてやる。




二人は酒を飲みつつ会話を交わす。
会話と言ってもどっちかが話題を振って、どっちかが相槌を打つの繰り返しだが。


暫く飲み続けて、銀時にある変化がおきた。


「……ひっく」


突然聞こえたしゃっくりに高杉は酒を飲む手を止めて、呆れた顔で銀時を見た。


「おめェ、もう酔ったのか?相変わらず…弱ェ」


「う…うるせー…ひくっ」


酔いが回ってきたらしい銀時はほんのり頬を上気させてそれでも酒瓶を手に取る。


「もう止めとけ」


「もっと〜…これからだろー!」


高杉の制止虚しく銀時は瓶ごと口に運び、中の酒を飲み始めた。
銀時の足元には高杉の倍以上の瓶が転がっている。


「(こいつ…いつの間にこんな飲みやがった?)」


高杉は苦笑いを浮かべた。





一方、高杉の部屋の外では中から聞こえる他者の声に首を傾げる女性がいた。


「どうしたでござるか、また子殿」


「あ、万斉先輩、武市先輩…」






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