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□旧友として
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俺は昔から二人のことを知っている。自慢するわけではないが、おそらく自分が一番奴らのことを第三者として見てきた人間だと思う。“羨ましい”だって?ははは。代われるならこのポジション代わってもらいたいくらいだ。ははははは。

「おいヅラぁー」

廊下から自分を呼ぶ声がした。振り向くと銀時がいた。

「ふぅーやれやれ。これで何日目だ」

大きく溜め息を吐きながら俺は立ち上がり廊下へと向かった。

「悪ぃけどヅラ、これアイツに渡しといてくれ」

そう言いながら銀時はナフキンで包んだ箱を自分の前に差し出した。

「悪いと思っているのなら自分で渡せばいいだろう銀時」

「うるせぇな。それができねぇから頼んでんだろ」

銀時は眉間に皺を寄せて罰が悪そうな顔をする。
仕方ないと思い、俺はその箱を受け取った。銀時はよろしくと言って教室へ戻っていった。
自分ながらいつも甘いと思う。嫌なら突き放せばいいのだが、それができないのは俺も相当な物好きなのだろう。

箱の中身は昼に食べる弁当だった。高校に入学してから銀時はわざわざ奴の、高杉の分を作ってやっているのだった。本人が直接渡せばいいものをそれをしないのには理由があった。
何、そんな大したことではない。先日二人は喧嘩したのだ。内容を聞けば、絶対に買って来いと言った洋菓子を高杉が忘れたということで勃発したらしい。俺はそれを銀時の口から聞いたときひどく呆れたものだった。“なんだそんなことか”と呟いたら“喧嘩に大きいも小さいも無ぇ!”と顔面にパンチを喰らった。

……まぁ、そんなことがあり二人は互いに顔を合わせづらく自分が間に入って仲介しているということだ。喧嘩して早三日が経っている。そろそろ面倒臭くなってきたので元通りになってもらいたい。俺の苦労が絶えない。本当に困った奴らだ。



昼休みになり、俺は弁当を届けに高杉のいるクラスに顔を出した。

「おぃ高杉、貴様いつまでこんなこと続ける気だ。俺もいい加減疲れてきた」

「さァな。銀時に訊いてくれ。怒り出したのはアイツだからな」

「その怒りの原因はお前だろう」

「うるせェな」

フンッと言って高杉はその場から去っていった。しかもちゃっかり弁当を受け取って。

「なんというか、…」

喧嘩していても当たり前のように弁当を作ってやる銀時とそれを受け取る高杉、お前らは一体何なんだと激しくツッコミたい。この自然であるかのようなやり取り、お互いしっかりキャッチボールができているじゃないかっ!これじゃあまるで間にいる俺が邪魔じゃないか。それなら……、俺はひとつ思いついたのだった。



授業が終わった放課後、俺はわざと帰るのを遅らしていた。
銀時と高杉にそれぞれ“話があるから放課後昇降口で待っていろ”と言って二人を呼び寄せたのだ。仲直りのきっかけを作ってやろうと思ったのだ。

生徒たちが帰り去った後そろそろだと思い、俺は階段を降りてそこへ向かった。今ごろもう仲直りしているかもしれない。
_____と思ったのは大きな間違いだった。靴に履き替えた銀時と高杉は昇降口の外で一定の距離を保ちながら自分を待っているようだ。互いにそっぽを向いている。おぃ、その微妙な距離は何なんだ!そこまでしてまだ謝ろうとしないのかっ!!

「幼稚園児か貴様らは」

「「誰がっ!」」

俺は二人に後ろから声をかけると、奴らは同時にこちらへ振り向いた。
やれやれ、息ぴったりじゃないか。

「それよりヅラ、話って何だよ」

銀時が訊ねた。こちらの意図を少しも理解していないのを知って俺はさらに落胆した。

「俺から話すことなど無いわ。むしろ話をしないといけないのはお前たちの方だろ」

「「………」」

そこで互いに無言になって目を逸らす。

「まったく、人がせっかく機会を用意してやったというのに」

俺はそう言って、銀時の左手と高杉の右手を取って、その両の手を重ねた。

「いい加減、仲直りしろ」

「「う……」」

二人は眉を寄せて気まずそうな顔をする。やがて重たい口を開いた。

「…ご、ごめんな高杉、いきなり怒り出して」
「悪かったな銀時、今度は忘れねェ」

俺はその言葉を聞いてにこりと微笑んだ。

「と、いうことだ。邪魔な俺はこれで失礼するぞ」

そう言って俺は二人を置いて先に帰っていったのだった。
これを境に二人ともまた元通りになった。


一件落着。銀時と高杉、自分にとって古くからの友人だ。幾度も世話を焼いているわけだが、俺はそんな二人のことを大切な仲間だと思っている。
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