longU

□泣き虫
1ページ/1ページ





親父が中国へ行って、先生が旅に出て、お兄さんと高杉さんと自分と妹が一緒に暮らし初めて、今日でちょうど一週間が経った。
一緒に暮らしての感想は……正直に言う。


(苦しい……)


なんというか、余り会話が無い。あっても「おはよう」や「いってきます」とか日常の挨拶だったり、必要最低限のことだけだった。自分たちも自分たちでお互いとしか余り話さないしお兄さんたちも同じようなものだった。もう少し会話を出来ると思っていたのだが、甘かった。お兄さん風にいうなら、宇治銀時丼並に甘かった(ちなみにいくら大食いで、好き嫌いがない自分でもあれは頂けない。妹も同様だ)。

この状態はほっとくとこのままなような気がする。それはダメ、だと思う。先生の言っていた『家族になりなさい』というのはこんなことではないくらい、自分でも分かる。
だからといって、どうやってこの状態を解決するかは分からない。考えれば考えるほど、どうすれば、どうやって、と同じ言葉がぐるぐると頭を回って思わず眉を顰める。


「兄ちゃん…」

「…なんだよ」


妹、神楽に呼ばれぶっきらぼうに返事をする。こいつが自分のことを『兄ちゃん』と呼ぶなんて珍しい。いつもは生意気にも『兄貴』と呼ぶのに。


「私…このままじゃイヤヨ」

「…………」

「もっと、遊んでたころみたいに…いっぱいおしゃべりしたいネ」


自分と同じ海みたいな青の瞳に、薄く涙の膜を張り訴える妹に自分は困った。自分だってこんな状態はイヤだ。けれど、解決する方法なんてついさっき話しかけられるまで考えていたが思いつかなかったのだから。


「…そんなの、俺だって同じだヨ」


そう言えば、妹はますます瞳を涙で揺らす。今にも零れ落ちてしまいそうだ。


「…………」

「…………」


お互い無言になる。とりあえず、どうにかして妹の涙を止めなければ。どうすればいいだろう?笑わしてみる?ティッシュで目をふく?それとも、


「よし」

「…?」


いきなり呟いた自分に妹は首を傾げた。


「神楽、酢こんぶ買いに行くぞ」

「え…」


戸惑う様子なんか無視して机の上にある財布をポケットにしまい、神楽の手を引っ張って玄関へと足を向けた。お兄さんたちは、まだ学校だ。


「酢こんぶ買ってから…そしたらもっかい考えるぞ」


だから、さっさと泣き止め。


言外にそう伝えてみれば、やっぱり兄妹なのか。泣き虫な妹は嬉しそうに笑った。




泣き虫
(泣くな、泣くな。兄ちゃんがいる)






***********
神威兄さんが優しい←
いや、幼少期というか、小学生の頃は優しいんです。けど中学入って喧嘩して思春期入ったら意地悪になったんです。そう中二びょ((次回は銀さんたち視点です。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ