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□あっちとこっち
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「それじゃ、明日も元気でくるよーに。以上!はい、さよならー」
『さよならー』とおざなりにも口に出せば、さっさと机からノートを取り出してリュックへと詰め込みながら今日の夕飯はどうするかなと思考を巡らした。料理が壊滅的にダメだった養父に育てられ、生きるために身に付けたこのスキル。幼い頃から台所に立っていたおかげかなかなかの腕前と密かに自負している。実際にその養父や幼なじみたちには評判がいい。評判がいいと言えばあの兄妹はどう思っているだろうか。二人とも小さな体にこれでもかというほどの量を食す大食らいだ。初めてその食事風景を見た日は胸焼けを起こした。食事は毎日残さず食べてくれるので、きっと不味いとは思っていないだろうが、あいつらの好きなものは知らない。
(聞きゃいいだけの話なんだろうけどよ…)
一緒に暮らし初めて一週間。
未だまともに話せないでいる。昔は何かと遊んでやったし、喋りもしたが、よく考えてみれば……。
「それって、幼稚園の頃の話なんだよなぁ…」
小さく呟いてうなだれた。ちょうど神威が小学校に上がる頃にあの二人の母親が病気で死んだ。それ以来、先生から話を聞くぐらいであとは顔を合わせるということがなかった。そもそも、母親がよく二人の手を引っ張って連れてきていたのだ。母親が死んで家事はどうしているのだろうと思っていたが、家政婦がやっていると聞いてこの金持ちがと毒づいたのはまあ割愛。
「銀時ィー帰ろうぜー」
「おー、高杉ー…」
「なんだ?落ち込んでんなァ」
「うっせぇ…」
力無く返せばまあ大体は予想つくがな、と言われた。
「どうせあの兎どものことだろう」
「…一応、お前も関わりあんだからな。他人事じゃねぇんだからな」
「わかってらァ」
興味なさげに見えるが何だかんだと、高杉も気にしていることを知っている。根は面倒見のいい奴なのだ。
「…とりあえず、今日の夕飯はアイツらの好きなものでも作ってやっか…」
「知ってんのか?」
「いんや、だがこれを会話のきっかけにする」
「頑張れ」
「テメーもな」
手始めに買い物でもしていきますか。
あっちとこっち
(こっちだって考えてるんです)
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短い……ごめんなさい_(:3」∠)_
あと二話くらいで一端、過去編が終わります