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□祝福の合図は
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攘夷時代




「金時!飲み比べするぜよ!」


戦場から帰還し、返り血でベタついた身体を湯で洗い流した後、酒でも飲もうかと部屋に入ればいきなり辰馬に飲み比べをせがまれた。

…とりあえず


「俺の名前は銀時だ!馬鹿本ぉお!!」


もじゃもじゃの、もしかしたら俺より酷い天パの辰馬の頭にかかと落としをくらわせてやった。辰馬はぐぇっと蛙が潰れたような声を発し地に沈み、それから辰馬は二度と目を覚ますことはなかt「勝手に殺さないでくれとうせ!!」「ちっ…!」



「で?何だいきなり。」

「いやのう、偶には金時と飲み比べをしようと思ったんだぜよ!!」

「へぇー…?」


確かに辰馬は飲み比べをするといったら、蟒蛇である高杉とやることが多い(ちなみに勝つのは大抵辰馬で、その様子を俺とヅラは酒をちびりちびり飲みながら傍観している)。

従って…


「怪しい…」

「うっ!」

「何か企んでる?お前…」

「た、企んでなんかないぜよ!」


そう言われても、怪しいものは怪しい。
辰馬は焦ったように口を開いた。


「金時が勝ったら高級菓子買ってやるぜよ!」

「まじで!?」


一応確認をしておくが、今は戦争の真っ最中だ。食料も不足気味で、それに加えて甘味など甘いものは特に貴重であった。
坂本という男は基本出来ない約束はしない奴だ。そうなれば…!


「おっしゃ!やってやろうじゃねぇか!」

「おお!そうこなくては面白くないぜよ!」


そうして、俺と坂本の飲み比べは始まった。














結果から言おう。


「…ま、負けた……」

「あはははー金時弱いのう!!」

「てめぇが、強すぎんだよ…!」


ああそうだよ。高杉だってなかなか勝てねぇのに、俺が勝てるワケねぇんだよ。


「うぅ…俺の高級菓子ぃ…」

「じゃき金時、わしのお願い聞いてもらうぜよ!!」

「お願いだぁ!?」


聞いてねぇぞ!!


「言う前に金時が飲み比べ始めたんじゃろ」


そうでしたね!!




あの後、辰馬に風呂敷を渡され「これ着て、大広間に来るぜよ!」と言われ向かっている訳だが…


「この着物…上物すぎねぇか?」



渡された風呂敷の中には、真っ白な綺麗な着物が入っていた。よく見ると銀糸で菊の花や蝶が刺繍されている。


(こんなもん着させて、何させる気かね…)


そんな事を考えながら向かっていると、目の前から見覚えのありすぎる奴が歩いてきた。向こうも気付いたようで、手を挙げてくる。


「よぉ銀時ィ」

「高杉」

「どこ行くんだァ?そんな珍しい格好して」

「大広間。辰馬の野郎に言われてな。そういうお前こそ、そんな珍しい格好してどこ行くんだよ?」


そう、高杉はいつもの少し派手めな着流しではなく、落ち着いた色合いの着物に黒の羽織りをはおっていた。


「ヅラの奴とちと賭けをやったんだが、珍しく向こうが勝ってなァ。罰としてこれ着て大広間に来いって言われたんだよ」

「お前も?」

「あぁ?」

「いや俺もさ…」


と先ほどの辰馬とのやり取りを話すと、高杉は顔をしかめた。


「あいつら、何考えていやがる…」

「本当にな…」


俺だけならまだしも、高杉も一緒となると何か企んでいるに違いない。考えても無駄なので二人で大広間まで向かうことにした。














暫くして大広間の前まできたわけだが…


「何か…人多くね?」


障子の向こうの気配がヅラと辰馬のだけと思っていたら、意外にも気配の数が多かった。


「あぁ…つうかこの人数、隊士ども全員いんじゃねぇのか…?」

「んー…」


そうこうしていると、障子が開いた。


「む?なんだ貴様ら。やっと来たのか」

「ヅラ……」

「ヅラじゃない、桂だ。早く入らんか。貴様らが来なくては始まらんからな」

「何が……」


始まらないんだと聞く前に部屋に入れられ、見ると予想通り隊士たち全員と辰馬がいたのだが…


「何これ……」


隊士たちは中央を開けるように左右に整列しており、その奧には辰馬が酒瓶と杯を持ち立っていた。

これではまるで…


「結婚式に決まっておるだろう」

「「っ!!」」


ヅラの発言に、俺たちは驚いて振り向く。


「何だ?」

「いや、だってよ…俺たち男同士だぜ?結婚なんて…」

「何を言っておるのだ。そんな事を言いながらも貴様ら付き合っているではないか」

「いや…そうなんですけど…」


戸惑っている俺たちをみて、ヅラは優しく笑った。


「ここは戦場だ。ここでは国が決めた法律など、無いに等しい。男同士だなんだと言う必要もあるまい」


そういうとヅラは俺たちの背中を押した。


「だから胸を張れ。前を見ろ。俺たちは、お前たちを祝福している」


その言葉を聞いて酷く胸が熱くなった。隣の高杉を見ると俺と同じなのか、何かに耐えるように歯を食いしばっていた。そんな様子の俺たちを見てヅラはさぁと促した。

ヅラに促され、俺は真っ直ぐ前を見た。誰もが優しく微笑んでいた。
俺は堪らなくなって俯くと、高杉が手を握ってきた。見ると高杉は真っ直ぐ前を見つめながら口を開いた。


「…一緒に…なってくれるか……」


どこか緊張した面持ちで聞いてくる高杉は何だからしくなくて。けれども、今までにないくらいに俺の胸は幸せで満ち溢れて。
俺は口元をほんの少し緩ませながら返事をした。


「……おう」


そうすると、高杉がこちらに顔を向け優しく笑いかけてきた。

あぁ、この笑顔はあの時の…

思い出されるは橙色に染まった空。ほんのり赤い耳。家族になってやる、と大声で言われた忘れることのないあの日。
あの日から毎日が色鮮やかな日々。

そして今日、今度はまた別の意味で家族になる。
二人で笑いながら一歩足を踏み出した。


「さあ!!花婿と花嫁のご登場ぜよ!!」


辰馬の嬉しげな声が部屋の中に響き渡った。










祝福の合図は
(友と仲間たちの、拍手の音)













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結婚ネタ´`
辰馬の土佐弁がわからない…!!
そして、『この日の〜』と少し繋がっているという件
高と銀の結婚式の格好は突っ込まんで下さい_(:3」∠)_戦争中だからということで←

高銀の結婚式はまだですか
私は全裸待機で常に構えてます←

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