short
□狂い咲きを見つめる
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現代
夜の見回り。最近は、冷たい風も出てきて少し肌寒い。
沖田は、珍しいことに夜の見回りに駆り出されていた。普段夜を任されている隊員が、急遽外せない用事が出来たとかで、その場にたまたま居合わせた沖田に、土方が代理を任せたのだ。
取り敢えず、帰ったら隊員と土方コノヤロー殺す。
そんな物騒なことを考えながら歩いていると、以前花見をやった公園の近くに来ていた。
ただ、見回ることも飽きる。けして、職務怠慢ではないが、どうせなのだから、と沖田は夜の公園に足を踏み入れた。
やはり夜という事もあって、昼間は賑やかな公園も別世界のように静寂を保っている。薄暗い、所々点いている電灯。冷たい風。群青色の天井。自分が今立っている場所が、分からなくなる錯覚に陥る。
暫く歩いていると、見慣れた銀色と季節はずれな桃色が視界に入った。
まだ季節ではない筈なのに、美しく咲き誇る桃色の桜。その木に凭れ懸かり腕を組みながら桜を見つめる銀色、坂田銀時。
銀と桜
普段の気怠げな雰囲気はなく、息が出来なくなるような美しい光景に、かけようとした言葉を思わず飲み込む。
不意に視線をこちらに寄越した銀時と、沖田は目が合う。銀時は、驚いたように目を丸くし口を開く。
「……総一郎くんじゃん…」
「総悟でさァ、旦那…」
先ほどの雰囲気など無かったかのような、いつもの気怠げな雰囲気に戻った銀時に少し息を吐く。そして、ゆっくりと近づいていく。
「何やってんの、こんな時間に?」
「代理の見回りでさァ。旦那こそ、何してるんですかィ?」
銀時の質問に答えながら、自分の質問もぶつける。そうすると、銀時は「ん…」と指で上を指す。その先には、先ほどまで銀時が見つめていた、季節はずれな桜があった。
「桜……」
「そ。」
短く返事をすると、銀時は大きく伸びをしながら続きを話した。
「この間、偶然見つけてよ。狂い咲きの桜なんて久々に見たから、ちょっと出てきたの」
「……昔は結構見てたんですかィ?」
沖田が聞くと「そだねー」と気の抜けるような返事をしてきた。
「昔馴染みで、狂い咲きの桜が好きな奴がいてな…。狂い咲きの桜を見つけては、俺を引っ張ってその下で、酒とか飲んだりして…」
そう話す銀時の瞳は、懐かしそうに愛おしそうに細められていて、まるで大切な宝物を自慢するようにも見えた。
沖田は何だか銀時が遠くに行ってしまいそうな気がして、思わず銀時の着物の袖を引っ張っる。
銀時は驚いて沖田の顔を見た。しかし、沖田の顔は下を向いていてよく見えない。
「旦那は……」
小さな、消え入りそうな声。
「そいつと…また一緒に居たいんですかィ……?」
何故そんな質問をしたのか沖田自身もわからない。けれど、直感的にもうこの銀色の傍に、その昔馴染みはいないのだろうと思った。
沖田の質問に銀時は、ただ静かに笑うだけだった。
狂い咲きを見つめる
(その姿は、酷く寂しそうにも見えた)
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狂い咲きは実際に見たことがありません← でも一度は見てみたいですねー…´∇`
狂い咲きが好きな昔馴染みとは、言わずもがな彼の隻眼の方。何となく、彼は狂い咲きとか散り際の桜とか好きそうだなぁ、という妄想を詰め込みました←
駄文だし、季節はずれにも程があるね!!←
しかも、バレンタイン関係ないね!!←