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□恋心は殺しました
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現代 ※紅桜篇後
この心 葬り果てんと
秀の光る 錐を畳に
刺しにけるかも
冷たい月が光る、ある日の夜中。
万事屋の寝室。
「ハァ………」
銀時は息を吐く。窓からは、月の光が差し込み薄暗い室内を照らしている。
この間の紅桜による、怪我はまだ完治しておらず、未だに体には痛々しく包帯が捲かれていた。
あの祭以来、再会した高杉。
姿を目にした途端、身体が、心がざわりと騒いだ。恐怖や嫌悪からくるものではない。
むしろその逆。
渇望
銀時の身体が、心が高杉を渇望した。
攘夷戦争時代。
高杉と銀時は、所謂恋仲であった。
あの地獄ともいえる戦場の中で、互いに惹かれ合い、求め、そして気がつけば隣にいた。
どちらかが、想いを伝えた訳ではない。けれど、幼い頃から共にいた二人にとっては、相手が何を考え、思っているかなど簡単に理解できた。
だからこそ、何も伝えなくとも隣にいることができたのだ。
幸せ、だった。
恩師を失い世界に絶望し、憎んでいても、
確かに、幸せだったのだ。
しかし、幕府は自分たちを見捨て、異人たちを受け入れた。
共に戦った仲間たちを粛清し、死してなお、辱めを受けさせた。
そんな幕府に、世界に絶望した高杉は復讐の道を、銀時は護れなかった仲間たちの懺悔の為に生きる道を選び、二人は別れた。
その時、銀時は高杉への想いを殺した。
道はきっともう交わらないから。
あの頃にはもう戻れないから。
暫くして、お登瀬に拾われ万事屋を始め、新八や神楽を始めとする様々な人々と出会い、銀時は高杉への想いは、もう完全に無くなったと思っていた。
いた、のだ。
祭で十年ぶりに高杉と再会したとき、銀時の中で何かが騒いだ。けれど、気づかないフリをした。
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う
あの想いはあの時殺した。殺したのだ。
そう自分に言い聞かせながら。
しかし紅桜のとき、それは儚い幻となってしまう。
求めていた。焦がれていた。渇望していた。
あの時殺した、と思っていた想いはずっと生きていて、そして今もなお、心に巣喰い銀時を苦しめる。
「………っ!!!」
ガッ!!と木刀を畳に突き立てる。木刀を持つ手が震えた。
目頭が熱くなり、透明な雫を落とす。震える唇から言葉を零す。
「たのむからっ……」
小さく小さく、苦しげに。
「たのむから…消えてくれっ……!!」
なんでもするから、たのむから。
消えてくれ。
「………高杉ぃ…!!」
苦しくて苦しくて仕方がないのです。
恋心は殺しました
(恋に苦しんで、耐え難くなっているこの私の心を、葬り去ってしまおうと、穂先の鋭く光る錐を畳に、突き刺したことだ)
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冒頭にある短歌は、斉藤茂吉が書いたものです。国語の授業をやった際に習った一つ。
初めて読んだ時、『これ…高銀じゃね?』と思った私は馬鹿だとつくづく思いました←
銀さんだけじゃなくて、実は高杉さんも別れたあと銀さんのこと忘れようとしたんだけど、祭のとき再会してまだ忘れてなかった自分に吃驚。紅桜の時も巻き込むつもりなかったのに、結局怪我させちゃってもんもんしてる。んで、我慢出来なくなって会いに行ってもっかい一緒になろう、とか遠まわしに言う…という裏設定的なのが私の中にはある←長い