short

□幸福定理
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現代




『僕と一緒に生きよう!!』

『河豚ノ助さん……!!』

『柚子さん……!!』



安っぽい、昼間の再放送。

大財閥の跡継ぎの男と庶民の娘の身分違いの恋の物語。
よくあるありきたりなラブストーリー。

けれどもついつい観てしまうのは、一度観ると続きが大体予想できるから、それが正解か否か確かめるため。
自分の予想と同じ所を探したり、時々予想外なことが起きたりと結構面白い。

画面の向こうでは、二人が熱い抱擁を交わしている。これから自分たちの事を誰も知らない所に行って、幸せに暮らそうと笑いあう二人。


ベタなパターン。
でも、やっぱりハッピーエンドが一番。




ふとテレビを観ていた少女、神楽は考える。

あの自分にとって、もう一人の親のような存在の銀色。坂田銀時にも、このような愛するものがいたのだろうか。
一度気になりだしたら止まらない。
なので、




「で、どうアルか?」


目の前には、今日発売したばかりのジャンプを読みながらソファに寝そべる銀時。


「…イヤイヤイヤ神楽ちゃん?なぁんで、そんな事聞いてくるのかな?銀さんわかんない」

「マダオな銀ちゃんに『恋人』なんていうもんが、いたのか気になったからアル」


至極簡潔に答える神楽。


「銀さんは皆の銀さんだから。そんなのいませーん」


話は終わりとでも言うように、銀時はジャンプに意識を戻す。そんな銀時の態度に神楽はさらに詰め寄る。


「……嘘アル」

「…っ!」


神楽の言葉に一瞬反応する銀時。その反応にますます確信を得る。


「どんな奴だったアルか?」

「………」

「男アルか?女アルか?」

「なな何で選択肢に男も入ってるんだよ!?」


銀時の焦り具合から『男』だったことが分かる。


「銀ちゃん女にもモテるけど、男にもモテモテネ」


神楽の頭の中に、瞳孔が開きっぱなしのマヨラーと自分とよく絡む腹黒いドSな少年の顔が浮かぶ。
あの二人もこの銀色の男に惚れているものたちだ。


「どんな男だったアルか?」


「どんな奴だったか?」から「どんな男だったか?」に神楽の質問が変化しているのに気付いた銀時はますます焦る。


「だーかーら!!恋人なんていなかったつうの!!」


そう叫ぶと銀時は傍に置いておいた木刀を手に取り、家から出て行ってしまった。


「銀ちゃん!!」


神楽は呼び止めるも虚しく、万事屋には神楽一人になった。


「行っちゃったアル……」


ハア…と溜め息を吐くと同時に、先程銀時が出て行った玄関から声が聞こえた。


「ぎーんーとーきーくーん」


こんな幼稚な言い方で呼ぶ人物は、一人しか知らない。神楽は出るために玄関へ向かった。





「む、リーダーか」


玄関にいたのは、現在指名手配中の銀時と古い知り合いの桂小太郎であった。


「すまぬな、銀時はいるか?」

「銀ちゃんなら今、外へ逃走中ネ」

「逃走中……?」


何のことだ?というように首を傾げる桂。
そういえば、この男は銀時の古い知り合いだったなと神楽は思う。もしかしたら、銀時の恋人について何か知ってるかもしれない。

そう考えた神楽は桂を家に入れ、ことの詳細を話した。














神楽の話を聞き終えた桂は「うむ」と唸る。


「確かに銀時には、昔男の恋人がいたぞ」

「おお!!どんな男だったアルか!?」


興味津々に聞いてくる神楽に、桂は少し苦笑をこぼしながら、少しだけならいいだろうと話し始めた。


「とにかく、性格の悪い奴でな。よく銀時と喧嘩をしてその反応を楽しんでいたものだ。頭はいいくせに酷く不器用で、なかなか素直に銀時に想いを告げられずにおったわ」

「何か銀ちゃんと似てるアルな」


神楽の言葉に桂は面白そうに笑う。


「ああ。あの二人は似ておったぞ。外見も性格も違うくせに、根本的なところは同じで…二人がいないところでは、似たもの夫婦などとちゃかされておったわ」


その当時のことを思い出しているのか、桂の目には懐かしさが宿る。


「暫くして付き合うようになって、銀時も幸せそうに笑っていたな」

「幸せそうに……」


桂の台詞に神楽が反応する。


「…今は銀ちゃん、幸せじゃないアルか?」


神楽の問いに桂は驚くが、すぐに顔を綻ばせる。


「…いや、ちゃんとあやつは今幸せだぞ。なんていったって、お登瀬殿や新八くん、それにリーダー。銀時の周りには、銀時を慕ってくれているものたちで溢れているからな」


桂の言葉に神楽は嬉しげに笑う。


「私も銀ちゃんといれて、幸せネ!!」

「たでぇまー…」

「あっ!!」


玄関から先程までの話の、話題だった銀時の声が聞こえた。


「おかえりアル!!銀ちゃん!!」

「うおっ!!?」


居間に入ってきた銀時に、神楽は勢いよく抱きつく。銀時はよろめきながらも神楽を抱き留める。


「何ですか〜神楽ちゃん、いきなり抱きついてきやがって。何か、いいことでもあったんですか〜?……ってヅラ?」

「ヅラじゃない、桂だ」

「何でいんの?」

「いや、少し遊びに来ただけさ」

「お前ねぇ、自分が指名手配犯ってわかってんの?」


銀時が呆れたように口を開く。


「銀ちゃん!!」

「うおっ、何だよ?」


いきなり大声を出す神楽に、驚きながらも銀時は返事をする。


「私、銀ちゃんといれて幸せアルよ!!」


ふんっと胸を張って言う神楽に銀時は、困ったように、けれど嬉しそうに笑いながら神楽の頭を撫ぜる。


「俺もですよ、コノヤロー」


そんな二人の掛け合いを見ていた桂は、小さく声を漏らす。


「いい顔だな、銀時…」


先程、桂が言った通り銀時は今幸せなのだろう。けれど、


「貴様はまだ、あやつを求めているのだろうな……」


そう言う桂は、どこか悲しげだった。














幸福定理
(お前もまだ、この銀色を求めているだろうか)









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神楽好きですよ^^
というか私はあの夜兎兄妹が好きなんです。かわいいです。高と銀が結婚することになればこの兄妹が子供ですね←
お互いこぶつきでいいじゃない!!

あと、冒頭の河豚ノ助と柚子は今旬の食べ物からとりました←至極どうでもいい

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