short

□青春
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「最悪だ…」


銀時は痛む額を抑えながら、そう吐き捨てるように言い放った。

足下には、ここから程近くにある高校の制服を着た男子生徒数名。
皆一様に、お世辞にも優等生とはいえないような風貌。

先刻、銀時に絡み返り討ちにあった不良たちだ。

銀時はその特異な容姿のせいで、よく不良たちに絡まれる。
日に当たるときらきらと輝く銀髪、石榴のような紅い瞳。これらは、自前のもの。わざわざ染めたり、コンタクトなどしていない。

今回も学校の帰りに絡まれ、人気のない空き地へ連れて来られた。いつもなら、一緒に帰っている喧嘩、というか派手なことが好きな幼なじみと返り討ちにしているのだが、今日その幼なじみは用事があるとかで別に下校。

銀時も弱くはないが(むしろ強い)、今回は相手が悪かった。以前にも返り討ちをしたことがある不良たちで、その時のお返しも含めて多数で銀時にかかってきた。

これに流石の銀時も苦戦したが、結果勝利。だが、倒したと思っていた不良の一人が起き上がり、銀時の頭にバットを振り下ろした。

すぐにその不良に一発いれ倒すものの、銀時は頭に傷を負った。
頭というよりも、どちらかといえば額の方でバットを受けたので、脳にはあまりダメージはないだろう。しかし、額の皮はぱっくり割れ血を流している。

軽い貧血で銀時はその場に座り込む。


(あー…こりゃ暫く動けねぇな)


一人苦笑していると、携帯の着信音。
ポケットに手を入れ取り出し確かめると、用事があるとかで別に下校したはずの幼なじみの名前。

銀時はボタンを押し電話にでる。


『…オイ、銀時ィ。テメー今どこにいる』

「空き地」

『何だって、そんなとこにいんだァ?』

「絡まれたんだよ、つか迎え来て来んね?」

『あァ?自分の足で帰ってこい』

「いやそれがよぉ、ちょっと額切っちまって血ィ足りないんだわ。歩いて帰んのは無理かねえ」

『………どこの空き地だ』

「○×△ビルの裏」

『待ってろ』


そう言うと高杉は電話を切る。
銀時は貧血でダルい体を起こし、フェンスに寄りかかって高杉を待った。







「銀時!!」


名前を呼ばれ閉じていた瞼を開け、前へ視線を向ける。フェンスの向こうから自分の名前を呼ぶ高杉の姿があった。

軽く腕を挙げ、意識があることを伝えると高杉はフェンスを乗り越え銀時の元に走った。


「大丈夫か?」

「どこをどう見たら、大丈夫に見えるのかな晋ちゃん」

「そんな軽口吐けんなら、大丈夫だな」


呆れたように溜め息を吐くと、高杉は銀時に背を見せながらしゃがみこむ。


「オラ、背負ってやるから乗れ」

「んー…」


銀時は高杉の背に乗る。所謂、おんぶだ。

高杉の背中は暖かく、耳を当てて心臓の音を聞けばドクドクと早い鼓動。


「あれ、高杉走って来てくれたの?」

「あァ?馬鹿が、そんなことするかよ」


ハッと鼻で笑う高杉。しかし、そんな高杉の言葉とは裏腹に鼓動は走った後のように早く脈を打つ。心なしか首もとが、汗ばんでいるように見える。


(そういや、さっき結構必死な感じに名前呼ばれたような…)


ぼんやりと考えていれば、高杉がぼそりと小さな声で呟く。


「……あんま無理すんじゃねェ…」


高杉に背負われている銀時には、その呟きがばっちり聞こえて。


その呟きの返事代わりに、銀時は首に回した腕の力を強くした。










乗り越えたフェンス
(君の必死さに、胸が熱くなりました)









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