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□星屑は唄う
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高杉晋助という男はこの学校一の不良と呼ばれている。
周りが勝手にそう呼んでいるだけで高杉自身は別にそうは思っていない。


ただ、喧嘩というか派手なことが好きで、売られる喧嘩を片っ端から買っていった結果こうなっただけ。
高杉が頭を務めるという『鬼平隊』もいつの間にやらそんな話がでていた。


要するに、高杉自身はこれといって直接関わっているわけではないのだ。


そんな高杉は、昔からピアノを弾いていた。きっかけはあるCD。たまたま、目につきなんとなしに聞いてみた。当時まだ小学生だったにも関わらずそのCDを聞き感動したのだった。それが吉田松陽のCDだった。


それからは独学でピアノを学び、暇さえあれば弾いていた。気まぐれで始めたものだったが、高杉は夢中になったのを今でも覚えている。


というのも、中学三年生のとき吉田松陽が病死してからはピアノを弾いていなかっのだ。




そうしてピアノから離れ高校に入り、学校一の不良だと呼ばれていたある日の放課後。


音楽室に忘れ物を取りに(その日は珍しく授業に出ていた)行った時ピアノが視界にはいった。



気まぐれだった。



ピアノを始めたときのように、気まぐれに鍵盤を叩いた。


久しぶりに叩く鍵盤はあの頃と変わらない音を出し、指はもう目を瞑っても弾けるほど指に染みついた曲を奏でる。


夢中になって弾いていれば扉の方から物音。バッと驚いて顔を向ければ、扉の隙間から覗いていた人物と目が合う。


紅色の瞳。


一瞬飲み込まれそうな感覚に陥るが、すぐさま教室を出た。相手の顔もろくに見ずに立ち去ろうとする。

その時、声を掛けられた。


『なぁ!』


黙って振り向く。窓から入る夕日が眩しい。声を掛けた人物の顔を見る。

きらきらと輝く銀色の髪。その色を見たとき思わず先程弾いていた曲について語った時の吉田松陽とコメントを思い出す。


『この星屑の光は美しい銀色をイメージとしています』


そう考えていれば銀色はさらに口を開く。


『さっきの曲、吉田松陽先生の曲だろう!』


まさかその名前が出るなんて思わず、目を見開く。

そうして、銀色は歌うように言葉を紡いだ。


『俺も好きなんだ、なぁ他にはどんな曲が弾けるんだ?』


この銀色は気づいていただろうか。


笑った顔が、どこか泣きそうに歪んでいたことに。

その顔を見たとき衝動的に抱き締めたいと思ってしまった己の気持ちに。




銀色は気づいていただろうか。











涙で濡れる
(いや、きっと気付いていまい)









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高杉視点^^
はい、高杉は一目惚れだったんだZE!っていう←
なんて俺得、サーセン。
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