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□彼の人は微笑む
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現代 ※『狂い咲きを見つめる』の続き
夜の巡回。
最近吹いてくる風も暖かくなってきたが、やはり夜になるとそんな風も冷たく己の体を否応なしに冷やしていく。
こんなこと、前にもあったなとぼんやり考える。
あぁ、なぜ己がこんなことをしなくてはいけないのだ。他の者たちに任せればいいものを。とりあえず、
「土方死ねコノヤロー」
「…いきなり、んなこと言うのは今に始まったことじゃねぇがあえて言うぞ。テメーが死ね」
「やだねィ土方さん、そんな酷いこと言うなんて、あんた最低な野郎でィ」
「テメーが先に言ったんだろうが、総悟ォオォオオ!」
隣で声を荒げる上司に己はわざとらしく耳を塞ぐ。
ふと視線を上へと向ける。その時、見慣れた銀色が視界に入った。
「……万事屋?」
先程まで騒いでいた上司も気付いたのか声を漏らす。
「なんだって、あの野郎あんなとこにいんだ?しかも、あんな格好で」
上司の疑問に己も心の中で同意する。
銀色、坂田銀時がいるのはちょっとした老舗の旅館。老舗なだけあって値段もそれなりにするところ。銀時はいつもの和洋折衷のような格好ではなく、白地に紅い椿の花がはいっている着流し。手には煙管を持ち、旅館の窓際に肘を立てて外へと煙を吐き出している。
いつもとは違う雰囲気の銀時に隣の上司は息をのむ。しかし、己だけは違った。
あんな雰囲気の彼を、一度見かけたことがある。
狂い咲きの桜の木の下で、もう傍にはいないという人物に想いを馳せていた銀色。
その時の雰囲気と酷似していた。
違うところを挙げるとしたら、あの時のような寂しさはないというところか。むしろ、どこか柔らかな表情をしている。
暫く見つめていると、銀時の後ろから腕が伸び手に持っていた煙管をとられる。女物のような派手な柄の紫の着物が見えた。腕の感じからして男のようだ。
銀時は煙管をとった人物に何か一言、二言話す。そうして、銀時はまるで花が綻んだかのように笑った。
そのまま、銀時は腕に引き寄せられ部屋へと消えていった。
(あぁ、そうか…)
「…傍にいれたんですねィ」
「あ?何か言ったか?」
己の小さな呟きに上司は聞き返す。
「いいえ、誰も『土方さんなんて死んでしまえ』なんていってやせんぜィ」
「総悟ォオォオオ!!!」
彼の人は微笑む
(あなたが幸せになることを、己は心から願っています)
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沖田君視点^^
『狂い咲き〜』の続編
沖田君好きですよ、あの銀さんに対しての慕い具合。大変、可愛らしいと思います←