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□空へと溶けたのは紛れもない自分でした
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現代 ※死ネタ注意




言わなければならない言葉がありました。


けれどそれを伝えるには自分は臆病で。


伝えることが出来ませんでした。


だからこそ、再び逢ったとき今度こそ伝えようと。


伝えなければならない、と思っていたのに。


















目の前に広がる光景に自分は固まるしかなかった。

何やら外が騒がしいなと思いふと玄関へと脚を向け、扉を開き、階段を降り立った瞬間、嗅ぎ馴れた鉄の匂いが自分の鼻を刺激した。

それは階段を降りたすぐ側の路地裏から漂っていて。

嫌な予感しかしなくて、心臓がばくばくと激しく脈を打ち、気持ち悪い汗が流れ、息も苦しいのに自然と脚は路地裏のほうへと向かって。

そこに広がる光景に自分はただただ、固まるしかなかったのだ。


「高…す、ぎ…?」


肩を大きく揺らしながら荒く息を整える彼の着物は真っ赤に染まっていて。
着物だけてなく彼自身も真っ赤に染まっているのだと気付いた時は、バッと弾かれたように駆け寄っていった。


「高杉!!」


彼の隣に足を着け腹から止めどなく流れ出る命を必死に止めようと圧迫する。けれどそんなこと無駄だと嘲るように流れは止まらない。それが悔しくて、唇を強く噛みながら尚も力を込める自分の手に弱々しく彼の手が重ねられた。

はっと顔を上げ、見れば薄く笑う彼の姿があった。


「…や、めろ……銀…とき…」

「何言ってやがんだ馬鹿やろうが!!」


諦めんじゃねえよ!と自分が言えば、自嘲するように笑みを深くした。


「バカ、が……もう…おせぇ、よ……」


お前だって分かってるんだろう?と視線で訴えてくる彼の眼から自分は視線を逸らす。


あぁ、分かっている、分かっていたさ。


けれど、だからといって自分はそれで簡単に諦められるような質ではなくて。


「……いやだ」


認めたくない
認めたくない
認めたくない


「いやだ…高杉ぃ…」


ぐるぐると心がこれを現実と認めない。
それでも重なる彼の手の体温が徐々に冷たくなっていくのが、否応なしにこれは現実なのだと突き付ける。


「…ぎ、ん…時…」


弱々しく己の名を呼ぶその表情は、あの狂気じみた笑みではなく昔のような優しげな笑みを浮かべていて。


あぁ、止めてくれ。

これでは本当に最期のようではないか。


自然と目頭が熱くなり、視界が歪む。


伝えなければならない、ことがあるのだ。

あの時、言えなかった言葉を今度こそ。


だから、だから、



「頼むから……眼ぇ、開けてくれよ高杉ぃ…!」



いつの間にか、あの奇麗な鉄色の瞳は閉じられていて苦しげにやっていた呼吸も止まっていた。
















『好きだ』と言われました。


周りは天人や部下だったものたちの屍で囲まれ、そこかしこから硝煙や鉄の匂いで溢れている地獄のような場所で、


『好きだ』と言われました。


何を言っているのだと、自分は初め笑いましたが彼の鉄色の瞳が嘘ではないと自分を射抜くので怖くなってしまったのです。

ここで頷いてしまったら再び大切なものが増えてしまう。

自分が大切だと思ってきたものは、ことごとく壊れてしまっていたので、彼がもしそうなってしまったらと考えた時震えが止まりませんでした。

いっそ壊れてしまうのなら、と自分は己の本当の気持ちに蓋をして彼の言葉を拒絶したのです。




それでも、忘れることが出来なかった自分は本当に愚かで、


今でも彼が自分を思ってくれているか分からなかったけれど、今度は今度こそはあの時言えなかった言葉を伝えようと。


だのに、だのに、




「高杉っ……!」


『好き』と音にならない言葉を小さく零す。

冷たくなってしまった彼を抱き締めながら、繰り返し繰り返しあの時言えなかった言葉を呟いた。















言わなければならない言葉がありました。


けれどそれを伝えるには自分は臆病で。


伝えることが出来ませんでした。


だからこそ、再び逢ったとき今度こそ伝えようと。


伝えなければならない、と思っていたのに。



彼はもう手の届かないところへといってしまったのです。













空へと溶けたのは紛れもない自分でした
(君は僕を、恨んでいるだろうか)











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死ネタ´`
ちゃんと二人は両想いだったんですが擦れ違いに。
こんなんですみませんorz

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