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□紫陽花の嫉妬
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現代 ※ビッチ銀
「土方くんってさ、いつから煙草吸ってんの?」
ぷかりぷかりとひたすらに身体に毒な煙を吸ったり吐いたりする隣の男を見てふとそう思った。
あぁ、香りが残りそうだ。この香りにあの男はどんな顔をするのだろう。
嫌そうに顔を眉を顰めるのか、それとも面白そうに口元を歪めるのか。
まあ、どちらの顔でもはたまた別の顔をしてもこれに何かしら反応してくれればいいと思う。そのことを想像しただけでも頬が緩む。
「…なに笑ってんだ、テメェ」
「ん?何でもないよ。で、いつから吸ってんの?」
「そうだな…」
考えるように部屋の天井を仰げば、先ほどシャワーに入ったばかりで濡れている黒髪から雫がぽたりと零れた。
「こっちで働き始めてからだな」
「ふーん…結構、遅いね」
「あ?いや普通は二十歳越えてから吸う奴のほうが多いだろ」
なに言ってんだ、というように眉を顰める土方に銀時はしれっと返す。
「だって俺の知ってる奴は十五とかで吸ってたぜ?」
煙管だけどな、と言葉を続ける。
「また、ませてた奴がいたもんだな」
「んー…ませてたっつうか、あの頃は娯楽とか何かを嗜むっつうもんが少なかったからな。探してるうちにたまたま煙管に辿り着いたんだよ」
特にあの頃というのは攘夷戦争の頃を指す。毎日の地獄のような戦いのなか、何かで気を紛らわせて日々を生きていたものたちも少なくはない。
自分なんかはよく坂本に甘味を貰って、それを戦いのあとに貪るように食べていた。その行為が疲れた身体を癒すためなのか、それとも戦場での悲惨な光景を思いだすまいと思ってのことだったのかなど考えるまでもないが。
その中であの男は煙管だった。
どこで覚えてきたなど知る由もなかったが、おおかた色街かどこかででも覚えてきたのだろう。
いつの間にか隣でぷかりぷかりと自然に吸っていた。紫煙をわざわざ顔に吹かれることは嫌いだったが、その香りと吸っている姿は嫌いではなかった。
今もそれは変わらない。
身体を重ねる度にあの男から薫る甘味とはまた違う、上品な甘い甘い香り。
その香りに酔いしれていた。
(あ、ヤバ……)
思い出しただけで身体が熱い。
「ねえ、多串くん。もっかいシようか」
「ゴホッ!!?」
いきなりのあまりにぶっ飛んだ発言に土方は思わず咽せる。暫く咳き込んでいたがそれが収まるとじっと銀時を見た。咳のせいで軽く瞳が潤み、心なしか頬も赤い。
「…いきなり何言ってやがんだ、テメーは」
「んー?まあ、いいじゃない」
へらりと笑う銀時に土方は溜め息を吐きつつも身体を銀時へと向ける。
「ああ、でも前から言ってるように跡とか傷は付けないでね」
「……あぁ」
銀時の言葉に土方は不満を抱きつつも返事をする。そんな土方の様子を銀時は愉しげに口元を歪めた。
身体は君に開いてもいいけれど、この身体に跡や傷を付けていいのは甘い甘い香りをさせて自分を酔わせるあの男だけ。
でもなかなかあの男は会いに来てくれないから、ちょっとは嫉妬させてね。
悔しかったら貴方の香りで自分を染めて頂戴な。
紫陽花の嫉妬
(自分はいつだって、貴方に嫉妬してるのですから)
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わ け わ か め \(^q^)/
すみませんビッチ感があんまり出てなすorz
紫陽花の花言葉で移り気ってありましたよね?たぶん←