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□こんな夢を見た
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現代




こんな夢を見た。


自分は橋の上に立っていた。欄干に腕を置き何をするでもなくぼぉっとどこかを眺める。

空は不思議な色をしていた。
濃い群青の絵の具に鮮やかな赤や紫の絵の具を上からびしゃりと浴びせたような、どこか不気味さを感じながらもどうしてか嫌いになれない色だった。

なぜ、自分はこんな所にいるのだろう。

思い出そうとも頭に霞がかかってうまく考えることが出来なかった。


暫くするといつの間にやら隣に男が一人立っていた。なんの前触れもなく、いきなりその場に現れたかのようだった。


「何をやってんだい?」

「人を待っている」


するりと零れた答えに自分は微かに瞠目した。先程まで自分が何をしているのか分からなかった筈なのに。けれども、これが間違いだとは思わなかった。なるほど、自分は人を待っていたのか。


「どんな奴を?」

「いきなり現れたと思ったら不躾にも質問ばかりかァ?」


それほど親しい訳でもってないのにずかずかと土足で踏み込まれるのが気に入らなかった。自分の言葉に男は「そりゃ、失礼」などと言っておどけてみせた。


「俺もね、人を待ってんのさ」

「随分と昔は嫌でもっていうぐらい毎日顔を見ていて、飽きるくらい喧嘩をした奴がいたんだ」

「今はもう、遠くに行っちまったけどな」

「待ち合わせをしてるんじゃねえ。ただ俺が勝手に待ってるだけなんだ」


ただの自己満足、そう男は続けた。
自分は驚いた。だってそれは、


「あ、金木犀」


男が橋の下にある川を眺めながら小さく呟いた。自分も釣られて視線を川へと移した。白い小さな花があの独特の甘い香りをあたりにまいていた。


「違ぇ、あれは銀木犀だ」

「銀木犀?」

「花が白いだろ。橙色だったら金だが、ありゃ銀だ」


男に説明して、そういえば昔同じことを誰かに教えた気がする、と既視感を感じた。そうだ、そいつもこの花と同じ銀の色を持っていた。


「あぁ、そうだそうだ。同じことを昔教えてもらったな」


男の言葉に驚いてばっと隣を向き顔を見た。そこで初めて、ちゃんと男の顔を認識した。相変わらず柘榴のような紅い瞳を緩ませてこいつは言った。


「なぁ、あんたはどんな奴を待ってんだ」


自分は、


「俺ぁ、人を待っている」

「随分と昔は嫌でもっていうぐらい毎日顔を見ていて、飽きるくらい喧嘩をした奴がいた」

「今はもう、遠くに来ちまったけどなァ」

「待ち合わせをしてるんじゃねェ。ただ俺が勝手に待ってるだけだ」


自己満足だ、そう続ければ男は。
俺の待ち人は、


「やっと来たのか、高杉」

「そりゃこっちの台詞だ、銀時」


どちらともなく笑った。






こんな夢を見た
(銀木犀、花言葉は初恋)









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電波な内容ですね、すみません。電波モノを書いてみたかったのです(電波モノってなんだ)まあ結局は夢落ちというオチなんですけどね!←
とりあえず高銀結婚はよ

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