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□風が囁き
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大根とわかめのみそ汁。
とろとろ卵の親子丼。
付け合わせに、胡麻を少しふりかけた沢庵。

本日の昼食。




「坂田様、昼食の準備が整いました」

「はいよー」


樹の言葉に気怠げな返事が一つ。
返事をした主、坂田銀時は傍に置いておいた杖を使って、先ほどまで座っていた縁側から腰を上げる。

昼食が準備されている居間に向かい、襖を開ける。机には、既に暖かな昼食が用意されていた。食欲をそそらせる出汁の香りが、鼻をくすぐる。

「あれ、高杉は?」

先に来ているものだと思っていた銀時は、樹に問いかける。


「まだ、出来上がってない書類があるらしく、少し遅れるそうです」

「なる程な」


銀時が納得したように頷く。

銀時と樹が席について、五分もしないうちに高杉がやってきた。


「遅れた」

「お、来たね晋ちゃん」


高杉も席につき、三人が揃い「では、」と銀時が声を掛ける。


「「「いただきます」」」







樹が屋敷で働くようになって一週間が経つ。初めこそ、仕事に慣れず四苦八苦していたものの、今ではスムーズに仕事をこなせるようになった。

昼食は三人一緒にとる。雇い主と使用人が、一緒の席につくというのもおかしいが、これは銀時のある言葉によって成り立った。


『どうせ二人で食べんのも寂しいからな。樹ちゃん一人ってのもアレだし、三人揃って食おうぜ』


これには初め戸惑ったが、樹に拒否権はなく、高杉も特に異論を唱えなかった。

それからは、三人揃って昼食をとる。会話は余りないが、けして居心地は悪くなかった。それは、高杉と銀時のだす不思議な雰囲気からなのではないかと、樹は思っている。







樹の仕事は、まず屋敷の掃除から始まる。日取りで掃除をする部屋を決め、丁寧にやっていく。そこから、洗濯、皿洗いなどをこなし、昼食と夕食を作る。

朝食はリハビリの代わりということで、銀時が作っていた。
昼食は一緒にとるが、家に母がいるため夕食は料理だけを作り上げ、そこで一日の仕事が終了する。

もともと、屋敷には高杉と銀時の二人しかいないため、重労働というわけではない。樹も余裕をもって仕事をこなしていた。




昼食をとり終わり、食後のお茶を飲んでいるとき高杉が「そういやァ」と話し始めた。


「今日ヅラの奴が来るぜェ」

「あ?マジで?」

「あぁ」


ずずっとお茶を飲む。


「仕事の書類を届けに来るらしい」

「将軍の補佐がわざわざ?」

「おおかた、俺達の様子見も兼ねてんだろ」


高杉がお茶を飲み干す。「おかわりは?」と樹が聞くが「いい」と手を軽く挙げて制す。


「大体、一時半位に来るっていってたか……おい九重、そん位に長髪のウザイ野郎が来たら俺んところまで案内しろ」

「はい」

「アレ、樹ちゃん突っ込まねぇんだ…」






ヅラこと桂小太郎は、高杉と銀時と共に攘夷戦争後期戦った戦友であり、第二次攘夷戦争を引き起こした一人でもある。

二人の幼少の頃からの幼なじみ。
現在は将軍の補佐として活躍している。




(長髪の男の人って何か、私が面接受けた時の面接官みたい……)


そんなことを考えながら、樹は現在玄関の掃き掃除をしている。


(今思えば、変わった面接官だった……)


確か名前は、そうキャプテn「ごめんくださーーい」

いきなり、門の向こうから声が掛かった。


「高杉君に銀時君いますかー?ごめんくださーーい」


何とも、幼稚な言い方だ。

まさか、桂様?
いやいやいやいや、そんなことあるわけ…

「はーい、今開けまーす」


ギギィと金具の擦れる音がする。


「どちら様ですk「む、やっと出たか」」

門を開けると、長髪の女性にも見える美丈夫が立っていた。


「すまない。高杉のとこの使用人だな?桂小太郎だ。仕事の書類を届けに来た」


そんなことありました。







桂を高杉の所まで案内し、お茶を持ってくると伝えたが必要ないと言われ、樹は仕事に戻ろうとしたが、銀時からお茶に誘われ現在休憩中だ。

つくづく、ここの二人は緩いと思う。

以前も、樹は銀時に付き合ってお茶を飲んだことがあり、後から高杉も交じるという偉業が成し遂げられた。これには、銀時も意外だったようで珍しげに高杉を見ていて、それが気にくわなかった高杉が『今日はもう帰っていい』と樹に伝えるや否や銀時を引っ張っていき奥の寝室に籠もった(次の日銀時は、しきりに腰をさすっていた)。




今日のお茶菓子は、きんつばだ。わざわざ、京都から取り寄せた老舗の和菓子で、あんこがほど良く甘くお茶によく合う。


「うまっ!流石、晋ちゃん。いいもん知ってるねぇ」


そう呟くと銀時は、二つ目のきんつばを口に運ぶ。その顔は幸せそうに緩みきっている。


「坂田様は、本当に甘味がお好きですね」

「そりゃ銀さん糖分王ですから、糖分なくして銀さんいませんから」


そんなことを真面目な顔で言う銀時が可笑しくて、樹は少し口元を緩める。


「ったく、ヅラの奴別に様子見に来なくたっていいっつうの…」

「ヅラ…桂様って綺麗な方ですね」

「あ?まぁ黙って立ってりゃあ美丈夫だが、頭ん中は電波だからなぁ…話すと残念な奴だぜ」


「あいつと話すと疲れる」と銀時は愚痴を零して、溜め息を吐く。


「…そういえば、桂様って私が面接を受けた時の面接官に似ているんですよ」


玄関の掃き掃除をしながら、思い出していた面接官を頭に浮かべる。桂を見た時も樹はそっくりだと思った。


「なに言ってんだよ。樹ちゃんの面接だけじゃなくて他の候補の面接官もやったの、ヅラだぜ?」

「え、そうなんですか?」

「おう」


銀時の口から出てきた真実に樹は驚く。


「けれど、面接官の方の名前桂様ではなかったと思うんですけど…」

「え?そうなの?」

「はい、確か名前は…キャプ、キャプテン………………ヅーラ……?」

「キャプテンヅーラではない、キャプテンカツーラだ!!」


突然、樹の言葉異を唱える声がが聞こえ、そちらに銀時と樹は顔を向けると、そこには『言い切った…!!』というような顔をする桂とそれを煩わしそうに見る高杉が立っていた。


「あぁそうでした、そうでした。キャプテンヅーラっていう方でした」

「いや、だからヅーラじゃないって、カツーラだって」

「すみません、ヅラ小太郎様」

「ねえ君わざとなの!?わざとなの!?」


樹のズレた発言に、桂は声を荒げる。


「つか、ヅラ…てめぇそれで面接やったの?馬鹿じゃないの?馬鹿なんですか?いや、てめぇは元から馬鹿だったか」

「ヅラじゃない、桂だ。馬鹿と言った方が馬鹿なんだぞ、銀時」

「うるせぇよ!!何だよ、その餓鬼みてぇな反論は!!しかも、誇らしげに笑うんじゃねぇよ!!」

「つかてめぇは、いい加減部屋に入れや」

「うおっ!!?」


高杉は苛立たしげに桂を蹴り、部屋に押し込めた。




ことり、と桂の前に湯呑みを置く。それに、桂は樹にお礼を言うと一口飲んでから口を開いた。


「全く、貴様等はいつも人を馬鹿にするような発言ばかりしおって……もう!そんな風に育てた覚えありませんよ!!」

「俺もてめぇに育てられた覚えねぇよ。なんでお母さん」

「俺ァまだお前のこと馬鹿にしてないがなァ」

「あとからする気満々だね、晋ちゃん」

「ハッ、当然」


相変わらずの二人を見て桂は、少しばかり安心したように笑う。


「その様子だと特に変わったこともないな」

「あぁ?別にねぇよ、んなもん」


銀時が気怠げに頭をがしがしと掻く。
高杉は特に発言せず煙管をくゆらせている。


「何をいうか。昔は何かあると喧嘩ばかりしおって、そのあと俺や坂本に相談してきたりしたではないか」


ずずっとお茶を飲みながら呑気に、恥ずかしい過去を暴露する桂に銀時は声を荒げる。


「そんな昔のこと引っ張ってくんじゃねえ!!」

「ハーハハハハハ!!散々俺を馬鹿にした報いだ!!そうだな、他には……」

「ほほう、他にはどんなことが?」

「樹ちゃん!!?何、好奇心丸出しで聞こうとしちゃってんの!!?」


樹の予想外の行動に銀時は目をむく。高杉も興味深そうにじっと樹を見つめる。
桂もこれには予想外だったらしく、驚いたように目を丸くした。


「なんだ、興味があるのか?」

「それはまぁ、お使いするご主人たちのことですし」

「それとこれとは、違うと思うぜ樹ちゃん」

「あわよくば馴れ初めも聞いてみたいなと思いました、まる」

「作文んんんん!!?」


まるでミニコントのような掛け合いをする樹と銀時。



「随分と溶け込んでいるな。予想以上だ」

「…やっぱりてめぇ、確信犯か」


呆れたように煙管の煙と共に、溜め息を吐きながら高杉は桂をみつかる。


「まぁな、面接の時も樹殿はなかなか頭の柔らかい人間だったのでな。この者ならいけるだろうと考え決定したのだ」

「ま、確かに堅い考え方してねぇから俺としてもいいがなァ」


「そういやァ」と高杉は言葉を続ける。


「九重んとこに、使用人があいつだけっつう連絡が入ってなかったらしいんだが、てめぇちゃんと連絡したのかァ?」

「む?俺は急に仕事が入ってな。近くにいた坂本に詳細を書いた文を出すように頼んだのだが……」


二人の頭に天パ頭の『あはははははー』と馬鹿笑いをする、土佐弁の友が浮かぶ。


((あいつなら忘れそうだな……))

「……次、来た時に一発頭にいれとくか」

「……そうしとけ」







「ではな。次に時間が空いたらまた来る」

「次、来る時は何か甘味でも持って来いよ、ヅラ」

「俺ァ酒は酒でいいぜェ、ヅラ」

「ヅラじゃない、桂だ!!」


高杉と銀時は玄関まで、樹は外の門まで桂を送ることになった。


「では、世話になった」

「いえ、またお越しください」


樹が頭を下げる。
そんな樹を見て、ふっと桂が優しげに笑う。



「世話のかかる弟たちたが、よろしく頼む」



桂の言葉に驚いて、樹が顔を上げる。
しかし顔を上げた頃には、樹に背を向け門をくぐっていた。

綺麗な黒髪が揺れた。





風が囁き
(ちらりと見えたのは、優しげな兄の顔)







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第二話
ヅラとの出会い。そのうち樹とヅラは昔の不器用すぎる高と銀の話をして笑ってればいい←
なんという駄文(^q^)話の筋が見えない

何だか高杉が随分と柔らかくなっていますが、それはあれです。銀さんと一緒にいるようになって雰囲気が柔らかくなったんです。しかしドS、されどドS←

次は第三話!!
ネタがないぞ!!←

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