long

□宇宙からの訪ね人
1ページ/1ページ





「おはようございまーす」


樹の朝の挨拶が屋敷に響く。しかし、返事はない。いつもなら、銀時が部屋から顔を覗かせて「おはようさん」と声を掛けてくるのだが、今日はそんな気配もない。

不思議に思いながら樹は、いつも朝食や昼食など一日の食事をとっている居間に足を向けた。




居間の前まで来ると、樹は取っ手に手を掛け襖を開ける。中には、


「オイ!!馬鹿杉、いい加減どけ!!朝から盛ってんじゃねえ!!」

「あァ?別にいいじゃねぇか」


畳の上に仰向けに倒れている銀時と、その上に覆い被さっている高杉がいた。


「よくねぇよ!!大体てめぇは……ハッ!!」


銀時は悪びれない高杉に、更に文句を言おうと口を開くが視界に樹の姿を捉え硬直する。


「い、樹ちゃん……」


銀時の言葉に、高杉も漸く樹の存在を認識する。


「何だ、てめぇか」

「いいい樹ちゃん!!これは違くてだな、高杉が無理矢理……!!」


焦りながら銀時は樹に弁解する。そして、その当人はというと、


「いいぞもっとやれ」


至って真面目な顔をして、爆弾発言を言い放つ。銀時はそんな樹に声を荒げる。


「何言っちゃってんのこの子はぁあああ!!」

「ククッ、分かってんじゃねぇか」


高杉は面白そうに喉を鳴らすと、改めて銀時の手首を押さえつけた。


「それじゃあ、許可も出たようだしヤるかァ銀時ィ」


愉快そうに口元を歪める高杉に、銀時はキレる。


「…だぁれがヤるかぁ!馬鹿杉ィイイイ!!」


早朝の屋敷に、怒りの声が響き渡った。







現在樹と高杉は正座させられ、銀時の説教をくらっている。


「何なんですかテメーらは、何?もしかして二人で事前に話してんのか?打ち合わせでもしてんですか、コノヤロー」


銀時の言葉に二人は首を横に振る。


「いえ、そういったことは全く」

「いつも偶々だなァ」

「どんだけ気が合うんだよ!!大体テメーらは……」


銀時が更に言葉を続けようとしたその瞬間。



ドカッ―――ン!!!!



「「「………………」」」


庭に宇宙船が降ってきた。
砂埃がたつ中一人の男が姿を現す。


「あはははははー、まぁた失敗してしもうたー」


訂正、一人の馬鹿な男が姿を現した。

三人は無言で男を見る。それに気付いた男は満面の笑みで口を開いた。


「おぉ!!金時に低杉じゃあなか!!久しぶりじゃのう」


男、坂本辰馬はまた「あはははははー」と大声で笑った。








あの後、高杉は「誰が低杉だ馬鹿本ォオ!!」銀時は「金じゃねえってんだろ銀だ、阿呆辰馬ァアア!!」と各自、己が言いたいことを叫んだ後、坂本に制裁をくらわせた。


「あはははー、いやー、ちと操縦ばミスったぜよ」

「ミスったじゃねぇよ。どうしてくれんだァ、あの庭」

「ほんにすまんのう。後で腕のいい職人ば紹介して来てもらうきに」

「それプラス酒と甘味な」

「あはははーおやすいご用ぜよ」


坂本辰馬。攘夷戦争時代、高杉と銀時、そして以前屋敷を訪れた桂らと共に活躍した男。途中戦争を離脱し、貿易会社『快援隊』を設立。

第二次攘夷戦争を引き起こした一人。
現在は、新政府お抱えの貿易会社へと成長した。

カンッと煙管を鳴らすと高杉は坂本に質問する。


「で、何だっていきなり来たんだァ?」

「いやのう、前にヅラに会ったときばぁ、おんしらに会ったと聞いてわしもと思ったんぜよ!!」

「だからって、宇宙船で来んなよ馬鹿」

「あはははーすまんきに!!」


相変わらずの友を見て、高杉と銀時は顔を見合わせ揃って溜め息を吐く。


「そういえば、ヅラが『一発殴られてこい』と言っとったんじゃが何のことぜよ?」

「あァ、そのことか」


そういうと高杉はおもむろに坂本に近づき、頭に重い一撃をくらわせた。


「うごふっ!!」

「よし」


これで、樹への文を出し忘れたことは無しになった。

殴られた頭をさすりながら坂本は銀時に声を掛ける。


「金時、調子はどうぜよ?」

「銀な銀。まぁ最初よりはましだな。杖がありゃあ、大体自分のことが出来る」

「ほうかほうか。それはよかったぜよ」


何だかんだとあったが、やはり坂本も銀時のことが心配だったのだろう。安心したように笑う。

銀時が入院している間の入院費は、全て坂本がもっていた。しかも、その病院一番の一人部屋で銀時も初めの頃は戸惑っていた。

退院後今までの入院費を返すと坂本に持ちかけたが『わしは好きでやったんだぜよ。気にすることないきに』と笑って断った。


「そうじゃ!!土産を持ってきたんだぜよ」


坂本はそう言うと、庭に墜落しっぱなしの宇宙船から二本の酒瓶を携えてきた。


「こっちは金時、こっちは低杉ぜよ」

「金じゃねぇってだから!!」

「坂本…そんなに死にたいか…?」

「金時の酒は甘め、低杉のは辛めにしたぜよ!!」

「駄目だこいつ、聞いてねぇ…」


銀時がうなだれる。


「どっちもいい酒ぜよ。じゃき、わしゃ帰る」

「いきなりだな!!」

「高杉ば弄りすぎたきに……。わしゃまだ死ねんからの」


見ると高杉が無言で刀を鞘から抜き、刃こぼれのチェックをしていた。


(こりゃ、駄目だ……)

「ま、仕事頑張れや。あと庭のことも忘れんなよ…」

「あははは!!了解じゃき」


そういうと坂本は宇宙船に乗り帰って行った。樹は散らかった庭を掃除するために箒とちりとりを取りに向かった。


「あ?坂本の野郎はどうした」

「帰った」

「追いかける」

「待て待て待て待て落ち着け高杉。そうだ酒を飲もうせっかくだから酒を飲もう今昼間だけど酒を飲もう、樹ちゃあん!!酒とつまみの準備してぇええ!!」

「わかりました」





「……うまっ!!」


坂本に貰った酒は、銀時の口によく合いとても旨いものだった。ほのかに甘くふわりと果物の香りが鼻を抜ける。


「おぉ…こりゃマジでいい酒だわ」


銀時が感動してじっくり酒瓶を眺める。高杉の方も口に合ったようで、つまみを片手にグビグビと飲んでいる。


「ふーん…『猫柳』ねぇ…」

「お二人とも追加のおつまみで…」


樹が台所で用意したつまみを、お盆に乗せて部屋に入る。しかし、銀時の姿を目にした途端、余りの驚きに身体を硬直させる。


「お、ありがとな…ってどうした?」

「いえ、あの…さ、坂田様……」

「ん?」

「頭に…」

「頭?」


銀時が指摘された頭に手をやる。そこには、



「ね、猫耳が……」


「!!!!!!」


銀時が声にならない叫びを上げた。


「何これ、誰これ、ヤダこれ」

「落ち着いて下さい」


混乱する銀時をおさめる樹。


「とりあえず写真撮りましょう」

「何でそうなるぅうう!?」

「違いますよ!!手はこう握って『にゃん』ってカメラ目線で……」

「馬鹿なの!?馬鹿なの樹ちゃんんんん!!?」


むしろこの状況を、楽しんでいる樹に銀時は声を荒げる。


「ちょ!!高杉も何か言ってくれ!!」


堪らなくなった銀時は高杉に助けを求める。だが、背中を向けていてよく表情がわからない。


「高杉……?」

「高杉様……?」


不思議に思った二人は高杉に呼びかける。すると、ゆらりと高杉は立ち上がり銀時に近づいた。


「た、高杉……?」

「……銀時ィ」


高杉は銀時の名前を呼ぶと、銀時の頭に生えている耳を掴んだ。


「え!?何いきなり!?」


銀時が戸惑っていると高杉が口を開いた。


「お前……可愛いなァ…」

「!!!?!?」


銀時、本日二度目の声にならない叫びを上げると、顔を耳まで真っ赤に染め上げた。


「な、な、な、何言って!!おまっ!!」

「銀時ィ」


高杉は銀時の耳から手を離し、首に腕を回して銀時を抱きしめた。
効果音をつけるなら『ぎゅうぅ』という感じで。


「……私お邪魔のようなので、ちょっと失礼しますね」

「ちょ!!樹ちゃん!!?」

「全部終わった頃に戻ってきますので、ごゆっくり」


そういうと樹は、銀時たちが飲んでいた酒瓶を手に部屋を後にした。出るときに、後ろで銀時の叫び声が聞こえたのは幻聴としておこう。







「ふぅ……」


部屋を後にした樹は、高杉が飲んでいた酒瓶の銘柄を確かめる。


「……『滴藍』」

(『できあい』、『溺愛』ね……)


どうやら坂本は、天人産の酒を二人に与えたようだ。天人相手に貿易をしている坂本にとって、天人産の珍しい酒を手に入れることなど簡単なことだろう。

銀時と高杉がいる部屋の方向に、樹は顔を向ける。


「あの方なりの優しさでしょうか……」


そう考えると桂も坂本も面白いご友人たちだと、樹は笑った。









宇宙からの訪ね人
(お土産は、珍しい一品となります)







***********
第三話です。坂本登場´∇`
でも登場シーンが短い。駄文サーセン←
ネタが固まらない内に書き始めたんで、難産でした……;

銀さんの猫耳は2月22日の猫の日に、因んだんですけど間に合いませんでした俺の馬鹿。題名の宇宙は『そら』って読んで下さい^^

それから、お酒の名前が何で漢字なのというツッコミ禁止です。アレです。輸入品で天人の言葉を訳したらこうなったということで←

第四話どうしましょう。ネタがない←毎回言ってる

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ