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□幽かな人
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『飲んでくたさい。これで大丈夫でございます』







* * * * *


朝、目が覚めた。目の前には最近やっと見慣れてきた天井の模様。襖から少し漏れている光に今日は晴れか、とぼんやり思った。布団から足を出しその空気の冷たさにぶるりと身体を震わせる。昨夜から雪が降っていたはずだから庭は雪化粧で染まっているだろう。いつもなら自分が起きて直ぐにでもまだ寝ているだろう連れを起こしに行くのだが、そんな彼奴も一昨日から仕事で帰ってきていない。


(もぅちっと、寝るか……)


寝過ごしたらお手伝いとして来ている彼女がきっと起こしにくる。そう思い再び天井に目を向け瞼を閉じようとした。しかしそれは叶わなかった。


「え」


思わず声が漏れた。

天井に。
黒い。
陰。


目が合った気がした。
ニヤリと陰は笑った。




* * * * *


「おはようございます」


そう言ってやってきた屋敷の奥から返事はない。おかしいな、と首を傾げるも以前にも似たようなことがあったのを思い出す。しかし、その時とは違って高杉は一昨日から仕事で留守のはずだった。


(もしかしたら、まだ寝てるのかも…)


そう思い直ぐに草履を脱ぎ、奥の銀時の部屋へと向かう。外はすっかり雪化粧に染まり空気は冷え切っていた。屋敷の廊下もそう外と変わらず途中、居間に寄ってストーブのスイッチをいれておいた。高杉は懐古趣味なとこがあるが銀時は合理性を求めるタイプなので案外色んなとこに電気機器がある。このストーブも火鉢で過ごそうとしていた高杉に反対して銀時が買ったものだと樹は聞いていた。それでも個人の部屋には火鉢を置いておくとこをみると何だかんだ銀時も高杉に優しいと思ったりもする。甘い、とも言うが。

銀時の部屋の前に着き襖に手を掛けて開く。まずこんもりと山のように膨らむ布団が目についた。中には銀時がいるのであろう。そして、それを面白そうにつつく女性もいた。はて。


「女性…?」


いやしかし、何やら透けているような…

そう疑問に思っていればふと女性と目が合う。真っ黒な目だ。その黒さに少したじろぐ。


『おや、可愛らしい子が来た』


ふふふ、と笑いながら口を開いた彼女はすくりと立ち上がった。真っ白な着物に青い帯。けれど肌もそれに負けないくらい青白い。髪や目がはっとするほど真っ黒だから余計にそう見えてしまう。まるで死人のようだ。いや。


「というか幽霊ですね」


だって透明だし
足が見えないし


『せーいかーい』


楽しげに幽霊は声をあげた。




幽かな人
(とりあえず、気絶してるあの人起こそう)




* * * * *
やっと始まりました。新シリーズ。
もろオリキャラが出まくります。高銀高銀はしない気がします。とりあえずうちの樹ちゃんは幽霊に動揺しないちょっとズレた子です。ちょいちょい進められたらないいな(´`)

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