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□V
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※明王視点








不動はこの前の試合で不覚にも足を痛めた
数日経った今、腫れて紫色をしたくるぶしをみて折れたな、と瞬時に判断し病院に行くことにした
思っていた通り、骨折はしていた
幸いにもヒビが入った状態で、ぽっきりとは折れていない
三週間もすれば完治らしいが念のために入院することになった






しかし…


「ハァ…」





退屈だった
退屈すぎて死にそうなくらいだった
あまり出歩くなとは言われたが絶対安静とまでは言われていない
不動は松葉杖を使って院内を散策することにした
売店に寄って暇つぶしのスポーツ雑誌(勿論サッカーのだ)と本、清涼飲料水を買った
院内の構造も把握し、天気もいいし屋上にでも行くか、なんて思いながらエレベーターのボタンを押そうとした時
「Twinkle,twinkle,little star」


歌声が聞こえた
しかもキラキラ星


不動はキラキラ星が嫌いだった
母親が昔、自分を寝かしつける時によくキラキラ星の英語版を歌っていたことがあったからだ



胸くそわりぃ、そう思っていたはずなのに
歌を歌っていた主を見た瞬間、その思いは吹っ飛んだ



真帝国が沈没した後の自分とどこか似たような目をしていた
何もかもがつまらない、いきることを諦めた、そんな目だった



強くなるために
勝つために
手段は選ばない、どんなことをしても
だから悪魔に魂を売ってもいい
あの時まで不動はずっとそう思っていた
そう、真帝国が沈没するまでは



真帝国が沈没してから、不動はただの生きる屍のようになってしまった
強くなる、その一心で影山のもとでスキルを磨いていたのに


呪縛のように自分につきまとう、あなたは偉くなって人を見返しなさい、という母親の言葉
力を手に入れることができなくては何もできない
力をも手に入れて上にあがる
その為に強くなる


ずっとそう思っていた
FFIで不動や佐久間と和解した後帝国学園に編入し、過去を忘れようとすることで、あの呪縛から解き放されると思っていた
実際、ようやく過去と決別し始めた頃だった




しかしキラキラ星をきいて思い出してしまったのだ
父親のこと、母親のこと、そして過去の自分を






キラキラ星が大嫌いなはずなのに



同い年くらいの少女を見て、不動は思わず話しかけてしまった
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