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□僕と君が過ごした時を思い出しながら見送って 前編
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目が覚めると天井が真っ白で、口には酸素マスク、手には点滴、胸には心電図を計るためのパッドがついていた
病院に運ばれたのか、俺は
無理もないか
いきなり倒れられたらそりゃ誰だってそうするわな




自虐的に考えていると扉が開く音とともに鬼道クンと佐久間がはいってきた




「気がついたのか、不動」
「気分はどうだ?」
「最悪だな」
「…お前らしいな」
「…不動、なんで隠してた?」
「…別に隠しちゃいねぇよ
試合の後言うつもりだった」
「嘘だな」
「…あのさ鬼道クン、俺のことなんでそんなに信頼してないわけ?」
「お前があまのじゃくだからだ」
「…」




否定はしない
でも流石鬼道クン
俺のことよくわかってるな






「医者からの説明は聞いてないんだ
お前から聞きたくてさ
…だから話してくれないか?不動」
「…」
「お前の口から聞きたいんだ」
「…はぁ、わかったよ
円堂たちはまだいるんだろ?
呼んでこいよ
全部話すからさ」
全員どうにか病室に入ることができ(まぁ壁山がなんとも不敏なことになっているが)俺は話をすることにした







「すまなかったな、昨日は
いきなり血へど吐かれておまけにぶっ倒れられりゃ誰でも驚くよな」
「…不動、」
「そう焦んなよ鬼道クン
ちゃんと話すからさ」
「…」
「不動お前の体に何が起きてるんだ?」




円堂の問い掛けに対し、大きく息を吸って、吐く


真実を話すことはなんとなく怖かった
今まで築いてきたこいつらとの関係が崩れてしまいそうで
「俺は見ての通り病気だ」
「…」
「…体がずっと怠くて微熱が続いてて、咳が酷くなっていったんだ
で、一ヶ月前に病院へ行ったらこう言われたんだ

末期の肺ガンで余命はもって半年です、ってな」
「肺ガン…!?」
「しかも末期…」
「抗がん剤治療は!?そうしたら治る見込みが」
「ありがとな、基山
俺も医者に抗がん剤治療を薦められた
でも断った」
「なんで…」
「抗がん剤治療しても死期を延ばせるだけでいずれは死ぬ
だったら残り少ない命を有意義に使うべきだろ?」
「不動…」
「だから同窓会に参加したんだ
…お前らと楽しくサッカーするために
それにこれからどんどん体は衰弱していくから全力でサッカーするのもこれが最後って思ったわけ」
「不動、なんで言ってくれなかったんだよ!!」
「円堂?」
「なんで真っ先に言ってくれなかったんだよ!!!
俺達…仲間だろ!?」
「!!」




仲…間…






怖かったんだ
本当にこいつらが俺のことを仲間だと思ってるのかどうかってこいつらとの関係が崩れてしまうのではないかって
何より、一人で死んでいくことが




怖かったんだ…
「そうですよ不動さん、俺達仲間じゃないですか!」
「水臭いでヤンスよ!」
「もっと早く知りたかったっすよ!」
「不動くん」



吹雪が涙目で笑いながらこう言った




「不動くん、君は独りなんかじゃないよ」






その言葉で今まで心の中にあった壁が取り払われダムが決壊するように感情が流れ出てきた





「…本当は…」
「?」
「…死にたくない
死ぬのが怖い
…いや、それよりももっと怖いのはお前らに忘れられてしまうことが一番怖いんだ…」





皆がハッと息をのんでしみじみとした雰囲気の中、染岡があえて明るく言った





「不動を忘れる?
んなわけあるかよ!
お前の事は忘れられないぜ!」
「インパクト強すぎだしね〜ウシシシ!」
「確かにな」




皆頷いて、あの時はさ〜、そうそう、と昔話に花を咲かせている



皆の反応についていけなくて口を半開きにしていると、佐久間が皆お前を忘れるなんてできないよ、と笑いながら言った
俺は目頭が熱くなるのを感じながら精一杯の笑顔で頷いた
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