黒子のバスケ
□sweet darling
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「火神くんは、凄く優しい人ですよね」
マジバのバニラシェイクを幸せそうに飲みながら、黒子くんが唐突に言った。
「……今更何を」
彼が優しいのなんて、私以上に黒子くんが熟知しているだろうに。
実際、彼は優しい──と言うより、甘い。
私の下らないイタズラに一々リアクションしてくれるし、大抵のお願い事は聞いてくれる(そこまで酷いお願い事はしていないつもりだけど)。
それからなんと言っても、妬かないこと。
私は今、黒子くんと二人きりでマジバにいるわけだが、これを火神くんに伝えた時も──
「今日黒子くんとマジバ行ってくるね」
「おう!あんまり遅くなるなよ!」
お父さんか!!と突っ込みたくなる返事が返ってきたのだ。
「恋人的に、それはどうなんですか?」
「そりゃ物足りないですよ!」
思わず声に力がこもる。
周りから向けられる視線に少し頭を下げてから、黒子くんに向き直った。
「で、なんでこんな話題を持ち出してきたの?」
「はい、ここからが本題です」
トン、と軽い音をたてて、黒子くんはバニラシェイクのカップをトレイに置いた。
ここに来てからもう30分ほど経っている。
カップは少し汗をかいていた。
「秋永さん、エイプリルフールという行事はご存じですよね」
「嘘を吐いてもいい日でしょ?」
「はい。他にも細かい決まりはありますが、ざっとそんな感じです」
そのエイプリルフールと、火神くんが優しいことと、何の関係があるんだろうか。
しかしながら、次に黒子くんが発した言葉は、私にとって大層魅力的なお誘いだった。
「──ヤキモチ、妬かせてみませんか」