:)不定期連載.

□:)君だけ 1
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1階の、風通しがいい渡り廊下を通って

突き当たると、その右側



そこに、彼はいる。





-

真っ青な空

ガラス越しのそれは、
いつもいつも広い

1つくらい雲があってもいいのに


そう思う、高校1年の春。


「おーい、誰かいないか?」


入学当初よりずっと賑やかになった教室

決まり事が絶えないこの時期は、決まって教室はざわざわ。


「環境保健委員やってくれる奴ー」


私、橘 琉那の担任は、
だるそーな表情してる、通称丸センセー。

由来?

名字が丸井だから。

あと、顔が丸いから。


「ねー丸センセー。環境保健委員って何するの?」

クラスに1人はいる髪の毛を金色に染めたいわゆる“ギャル“って子が、
この話し合いに対してだるそうな面もちで聞いた。

そしたらまた、だるそうな表情で丸センセーは首をコキコキと鳴らしながら答える。

「あー…と、確か水道の石鹸取り替えんのと、トイレの紙変えんのとかじゃねぇか?

んで、それを保健室に報告しに行って…」

「はいはいはい!! あたし! やる!!」

ガタン!と荒々しく席を立って、ネイルを天井に向けて伸ばすさっきのギャル。

それにつられてその取り巻きも席を立って

「ちょ、アヤずるい!! センセーあたしも!!」

「いやいや、私がやるし!!」

さっきまでだるそうにしてた女の子達が、
ぎゃあぎゃあと教室を一層騒がしくさせる


…何で急にやりたがるの?

聞くからに面倒そうなのに


聞き耳を立てていた私はまぁ上の空だったわけで、
ギャル達が騒ぎ出した頃教室の荒っぽさに気づいた。

そしてまた、窓の外に視線を写して。


あ。

白衣の先生がいる



透明の袋の中には空き缶がいっぱいで

どうやらゴミを捨てに行くよう

持ち方が肩にかけてるからサンタクロースみたいだ


しかもあっちはゴミ捨て場じゃないような…

あ、気づいてこっち戻ってきた


「…変な人だな」

ぽつり、と空気に飲み込まれた私の独り言


白衣の先生が建物に姿を消した時、

「橘! お前はどう思う?」

「へっ?」

私は現実に引き戻されて


当然何を話してるのなんか聞いてなかった訳で
皆の視線が痛いくらいに刺さった。


とにかく何か答えなきゃ、と…


「え、と…いいと思います…」

「いいよな!? うん、よし決定」

何度も頷く先生と、
えーっとうなだれるギャル達

先生はカツカツと音を立てて黒板に白い文字を刻んでいく


環境保健委員





…………ん?


橘?

あれ、このクラスに橘って私以外にいたっけ??

いやいや、私の後ろは舘(たて)くんです。


え…


………え!?


「もー何でよあたしがやるって言ったのに!」

「はいはいキャバ嬢は黙ってろー。

お前らどうせ笹木先生目当てで仕事しねぇだろ」


私の頭の整理がつかないまま話は進んでいって

今はもう体育祭委員なんて決め初めて


私はただ、呆然とその場に座ったまま。



「………嘘でしょ」


私の独り言は、

また騒がしい教室の中に溶けた。
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