佐藤ツインズ
□『一度は捨てたサッカーだけど。』
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鈴木英寿=文
text by Hidetoshi Suzuki
佐藤勇人は誰よりも勤勉に走る。
所属するジェフユナイテッド市原・千葉では、不動のボランチとして君臨する。守っては獰猛にボール保持者に襲いかかり、攻めては怒涛のフリーランで、敵陣を急襲する。
2006年11月3日。千葉は鹿島との決勝戦で2―0の勝利を収め、ナビスコカップ連覇を成し遂げた。
勇人は‘03年にジェフ千葉の監督に就任したイビチャ・オシムによって真のプロ意識を注入され、Jリーグを代表するボランチへと大飛躍した“オシムチル ドレン”の代表格である。今年8月16日のアジアカップ予選・イエメン戦では遂にA代表のピッチへ立った。その日は、双子の弟である寿人ともに、試合に出 場し、“日本代表史上初めて双子の兄弟が揃ってプレーした”記念碑ともなった。
ジェフの下部組織が生んだ佐藤勇人はいま、一直線にプロサッカーの世界を疾走しているように見える。だが、これまでの歩みは決して順調ではなかった。とりわけプロ前夜の10代は、自己抑制と自己爆発を繰り返し、余人には真似できない、起伏に満ちた道程を走ってきた。