佐藤ツインズ

□「兄弟というより親友ですね」2000
2ページ/3ページ

「兄弟と言うより親友ですね」
異口同音にそう語る。ジェフユナイテッド市原の2000年の新しい顔、佐藤勇人、寿人兄弟は、Jリーグ8年目にして、初めて誕生した「双子Jリーガー」だ。
といっても二卵性。顔や声もだいぶ違いが、性格は真反対と言っていいほど。それがサッカーにも表れている。
勇人はデフェンス力とロングパスを誇る守備的MF(ボランチ)、寿人はスピード突破を得意とするストライカー(FW)だ。
粘り強い守備で相手の攻撃を止め、ロングパスで前線の寿人を走らせる勇人。一瞬の速さで相手DFを置き去りにして、思い切りのよいシュートを叩き込む寿人。
「俺がボールを持ったとき、寿人がどこに動いてくれるか、見なくてもわかるんです。小学校のときから一緒にやってるから」(勇人)
「よくアイコンタクトなんて言いますけど、目が合わなくてもこっちに来るって感じるんです」(寿人)
その抜群のコンビで、二人は昨年秋の熊本国体に千葉県選抜として出場し、優勝の立役者となった。 サッカー上のコンビだけではない。二人は、私生活の面でも最高のコンビのようだ。
「中学時代には、お互いにうっとうしくて、口も聞かない時期もあったけど、高校が別々になってからよく話すようになりました」(勇人)
「高3のときには、勇人が家から通って、僕はジェフの寮に入ったんですけど、毎日練習で一緒になるのに、2日に一度ぐらいは帰ってから電話で話してましたね」(寿人)
小学校時代を埼玉県春日部市で過ごした佐藤兄弟。父は中華料理店を経営し、なかなか繁盛していた。土曜日のサッカーの練習後には、よく二人で店に寄り、父の料理を食べた。
「おいしかったよね。いろいろ種類があったし」(寿人)
「いっぱいあったな」(勇人)
しかし二人がジェフのジュニアユース(中学生年代)のテストに合格したため、父は店をたたみ、職を変えて一家で千葉に引っ越した。
「苦労かけたから、プロになれてよかったと思います」(寿人)
「でも1、2年で終わってしまったら何にもならない」(勇人)
「そうだね。ずっとサッカーで飯を食っていけるようにしなければね」(寿人)
「二人とも、まったく『エリート』なんかじゃなかった」と語る寿人。それだけに、二人の口からは「努力」「くさらない」という言葉が出てくる。二人のポジションには、それぞれ優秀な先輩が数多くいるが、「上の人の良いところを盗んでレギュラーになる」(勇人)。
「双子選手」の呼吸抜群のプレーを、一日も早くJリーグのひのき舞台で見たいものだ。


●大住良之(おおすみ よしゆき)●
1951年 神奈川県生まれ。「サッカーマガジン」編集長を経てフルーランスのサッカージャーナリストに。著書に「サッカーへの招待」(岩波書店)、「サッカーの話をしよう1・2・3」(NECクリエイティブ)などがある。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ